中国の有人宇宙船が地球に帰還、初の宇宙ステーション長期滞在を完遂
地球に帰還した神舟十二号宇宙船と3人の宇宙飛行士 (C) CMSEO
中国の宇宙飛行士3人を乗せた「神舟十二号」宇宙船が、2021年9月17日、地球への帰還に成功した。【写真】神舟十二号のクルーがCSSから撮影した宇宙と地球の光景3人は6月から「中国宇宙ステーション(CSS)」に滞在。3か月間にわたる初の長期滞在ミッションを完遂した。来月には、新たに3人の宇宙飛行士を乗せた「神舟十三号」の打ち上げも予定されている。神舟十二号神舟十二号は中国が開発した宇宙船で、神舟宇宙船として12機目、有人での飛行は7機目となる。聶海勝宇宙飛行士、劉伯明宇宙飛行士、湯洪波宇宙飛行士の3人が搭乗し、中国が建造中のCSSへと赴き、建造作業や各種実験、実証などを行うことを目的としていた。神舟十二号は今年6月17日(日本時間、以下同)、長征二号Fロケットに搭載され、甘粛省北西部にある酒泉衛星発射センターから打ち上げられた。軌道投入後、神舟十二号は軌道変更を行い、徐々にCSSへ接近。そして打ち上げから約6時間後、CSSのコア・モジュール「天和」に自動でドッキングした。搭乗していた3人はCSSに入り、90日間にわたって滞在。CSSにとって初の長期滞在ミッションとなり、また中国の宇宙飛行士が1回のミッションで宇宙に滞在した期間の最長記録を更新した。この間、CSS・天和モジュールの試験や、生命維持システムの検証、ロボットアームの試験と操作訓練、宇宙飛行士自身の健康管理、物資と廃棄物の管理など、宇宙ステーションの運用や宇宙生活にとって必要な技術や能力の実証を実施。さらに、船外活動も行い、ツールボックスやカメラの設置など、ステーションの組み立て作業も実施した。そして9月16日9時56分、長期滞在を終えた3人は神舟十二号に乗り込み、CSSから出帆。CSSとの間でランデヴー試験を行ったのち、徐々に離れていった。丸一日単独で飛行したのち、17日13時43分に軌道を離脱。機械モジュールや軌道モジュールを分離したのち、3人の宇宙飛行士が乗った帰還モジュールは大気圏に再突入した。高度約10kmでパラシュートを展開、約5.5kmで耐熱シールドを分離しつつ降下。そして14時34分、帰還モジュールは内モンゴル自治区のゴビ砂漠に設けられた着陸ゾーン「東風着陸地点」に無事着陸した。3人の宇宙飛行士の健康状態は正常で、カプセルから出たのち、北京に移動。隔離期間に入り、健康診断と健康診断を受け、リハビリを行うことになるなお、これまで神舟宇宙船は、内モンゴル自治区の四子王旗に着陸しており、東風着陸地点への着陸は今回が初となった。変更の理由は、四子王旗の人口が増えつつあり、今後着陸の支障となる可能性があるため、また宇宙船の回収や宇宙飛行士の健康診断などを、従来より効率的かつ早期に行うためとされる。中国の有人宇宙飛行計画を取り仕切る中国載人航天工程弁公室(CMSEO)は、着陸成功後「今回のミッションでは、宇宙ステーションの建設と運用のための重要な技術の実証を行いました。神舟十二号ミッションの完全な成功は、今後の宇宙ステーションの建設と運用のための確固たる基盤を築きました」との声明を発表している。聶氏は1964年生まれの56歳。2005年10月に「神舟六号」に、2013年には「神舟十号」に搭乗し、宇宙飛行をこなした。今回が3回目の宇宙飛行で、コマンダー(船長)を務めた。劉氏は1966年生まれの54歳。2008年に「神舟七号」宇宙船で宇宙へ飛び立ち、コマンダーのタク志剛(※1)氏とともに中国初の船外活動を成し遂げた。今回が2回目の宇宙飛行となった。湯氏は1975年生まれの45歳。2010年に宇宙飛行士候補に選ばれ、2016年に打ち上げられた神舟十一号のバックアップ・クルーを務めた。今回が初の宇宙飛行となった。10月には神舟十三号の打ち上げも神舟十二号が帰還したことで、CSSは現在無人で運用されているが、10月には新たに3人の宇宙飛行士を乗せた神舟十三号の打ち上げが計画されている。ミッション期間は今回よりさらに伸び、来年3月までの約5か月間の予定となっている。また9月20日には、CSSに物資を補給する無人補給船「天舟三号」の打ち上げも成功。打ち上げから約6時間後にはCSSとのドッキングにも成功した。神舟十三号の打ち上げ後、搭乗する宇宙飛行士によって荷物の搬出作業などが行われる。CSSは、中国が建設中の大型宇宙ステーションで、今年4月にコア・モジュールとなる天和の打ち上げに成功。建設と運用が急ピッチで進んでいる。今後、来年3月~4月ごろには「天舟四号」補給船の打ち上げが、5月ごろには、神舟十三号と入れ替わりに、また別の3人の宇宙飛行士を乗せた「神舟十四号」宇宙船の打ち上げも計画されている。さらに5月~6月ごろには、CSSの2番目のモジュールとなる「問天」の打ち上げと結合、8月~9月ごろには「夢天」モジュールの打ち上げと結合も計画されており、ちょうど来年のいまごろには、CSSは完成を迎えることになる。筆者注:※1……タクは「羽」の下に「隹」参考文献・http://www.cmse.gov.cn/xwzx/yzjz/202109/t20210917_48699.html・http://www.cmse.gov.cn/xwzx/zhxw/202109/t20210917_48719.html・http://www.cmse.gov.cn/xwzx/yzjz/202109/t20210916_48696.html・Shenzhou-12 astronauts return to Earth after 3-month space station mission - SpaceNews 鳥嶋真也とりしましんや著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
鳥嶋真也