沿って, Uav-jp 18/03/2023

シネマプレビュー 「余命10年」ほか3本(産経新聞)

映画「余命10年」の一場面(C)2022映画「余命10年」製作委員会

公開中の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「プレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。「余命10年」4日公開難病を患った女性が執筆した恋愛小説「余命10年」(小坂流加著)が原作。切なすぎる小説としてSNSなどで反響が広がり、発行部数50万部を超えるベストセラーになっている。同書は平成29年、静岡書店大賞の「映像化したい文庫部門」大賞にも選ばれた。茉莉(小松菜奈)は20歳で不治の病を発症し、余命は10年。生きることに執着しないよう、恋だけはしないと心に決めていた。そんなある日、同窓会でかつて同級生だった和人(坂口健太郎)と再会する。病に侵されていることを隠して、和人と楽しい時を重ねる茉莉…。生きることの大切さを突き付けた作品。2人のみずみずしい演技が、物語の切なさを際立たせている。茉莉の両親を松重豊と原日出子、姉を黒木華が演じ、命に限りのある娘や妹と接する家族の複雑な感情をにじませる。和人を静かに見守るバイト先の店主役のリリー・フランキーの演技もよかった。監督は、繊細で透明感のある映像美で定評のある藤井道人。4日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・梅田ブルク7などで全国公開。2時間5分。(啓)「金の糸」公開中ジョージア(グルジア)の女性監督、ラナ・ゴゴベリゼが91歳にして、日本の金継ぎ(陶磁器の破損部分を漆で接着し、金などで装飾する修復技法)に着想を得て描いた過去との和解の物語。ジョージアの首都、トビリシに暮らす女性作家、エレネ(ナナ・ジョルジャゼ)とその人生に関わった人々の過去やソ連時代の記憶を、何気ない日々の暮らしの中でたどった作品。79歳の誕生日を迎えたエレネが口にする「失われた時を求めて」。プルーストの小説のタイトルだが、本作のテーマでもある。ジョージア、仏合作。東京・岩波ホールで公開中。18日から大阪のシネ・リーブル梅田などで全国順次公開。1時間31分。(啓)「ムクウェゲ」4日公開コンゴ民主共和国東部のブカブは「女性にとって世界最悪の場所」と呼ばれ、20年以上の間で40万人以上がレイプの被害を受け続けているという。その女性たちを無償で治療してきた婦人科医で、ノーベル平和賞受賞者のデニ・ムクウェゲ氏の闘いの日々を追ったドキュメンタリー作品だ。「200人近くをレイプし、11人を殺した」と淡々と証言する武装勢力の元兵士。背筋がぞっとする。なぜ、このような犯罪が後を絶たないのか。金、レアメタルなど世界有数の鉱物資源国なのになぜ人々は貧しいままなのか。監督はTBS報道局外信部記者の立山芽以子。4日から東京・新宿シネマカリテ、12日から大阪・第七藝術劇場などで全国順次公開。1時間15分。(啓)「永遠の1分。」4日公開「カメラを止めるな!」(平成29年)の監督、上田慎一郎が脚本を手掛け、撮影監督だった曽根剛が監督した、東日本大震災が題材の佳作。深く胸を打つ。米国の映画監督が、日本で「3・11のコメディー映画」を撮ろうと奮闘する物語。「部外者」が震災の何を描けるのかと迷い、悩んだ曽田と上田の姿が直接投影されてもいるようだ。上田は、米ロサンゼルス地震からコロナ禍までをつなげた脚本を書き上げ、「困難に立たされている、すべての人々の力になれれば」との願いを込めたという。劇中歌も良い。そして、今年も11日に「永遠の1分」が訪れる。4日から東京・イオンシネマ板橋、大阪ステーションシティシネマなどで全国公開。1時間37分。(健)

シネマプレビュー 「余命10年」ほか3本(産経新聞)