Hands-on just before the release of the new AirPods! Evolved into a different sound, worth it even without noise cancellation
第3世代のAirPods
本日発売を迎えるアップルの新しい完全ワイヤレスイヤホン「AirPods(第3世代)」をひとあし早く試すことができた。音質や装着感、操作性などファーストインプレッションを報告しよう。【写真】第2世代AirPods、新AirPods、AirPods Proの違い■Proをベースにした開放型。耳乗せスタイルの装着感は?新しいAirPodsも開放型のハウジングを採用する、ANC機能は搭載しない左右独立の完全ワイヤレスイヤホンだ。価格は23,800円(税込)。ワイヤレス充電には非対応のケースが付属する第2世代のAirPodsは16,800円(税込)で、シリーズのエントリーモデルとして販売を継続する。充電ケースは縦長タイプから、AirPods Proと同じ横長タイプに変わった。前面にLEDインジケーターがある。充電端子はLightning。ケースの横幅サイズはAirPods Proよりも短くコンパクトだ。イヤホンの質量は第3世代の方がわずかに重く4.28g。第2世代は4g。ケースは第3世代が37.91g、第2世代が38.2g。イヤホンをケースに入れた場合の質量を足し上げると第3世代が46.47g、第2世代は46.2gになる。手に持った感触はほぼ変わらない。イヤホンの形状はAirPods Proをベースにしている。ハウジングの先端から背中までの厚みは新しいAirPodsの方がProよりも少しスリムだが、第2世代のAirPodsに比べると耳に挿入する本体は少し大きくなった。イヤーピースを装着しない耳乗せスタイルのインナーイヤホンだが、長年第2世代のAirPodsを使っている筆者の家族は、ハウジングのサイズが大きくなって耳に乗せづらいと話している。耳のサイズが小さめの方は、購入を検討する際にApple Storeなどで入念にフィッティングを試すことをおすすめしたい。感圧センサーによるリモコンを内蔵する、スティック状のステムはAirPods Proとほぼサイズが一緒。第2世代のAirPodsよりも33%長さが短くなっている。第2世代機は耳に乗せるとステムがこめかみにピシッと沿うように触れて装着感が安定する。新しいAirPodsはハウジングの厚みが少し増して、ステムが若干短くなった。耳乗せスタイルのイヤホンなので装着感が安定するのか少し気になっていたが、筆者の場合はものすごく相性が良かったようで、耳にピッタリとフィットする。AirPodsを装着している耳を真下に向けて傾けてみたり、頭を激しく上下左右に振ってもまったくイヤホンがズレない。ただ、完全ワイヤレスイヤホンは多くの場合、歩きながらイヤホンを充電ケースから取り出そうとした時に、手もとが滑って落としたりなくすことが多いと聞く。イヤホンの着脱はいったん立ち止まったり、着席した状態で落ち着いて行いたい。■まるで別モノ。驚くほどに充実した中低音サウンドのインプレッションを報告しよう。新しいAirPodsはウォームな低音域がものすごく充実して、第2世代のAirPodsとは印象が一変した。カスタムメイドのAppleドライバーとダイナミックレンジを拡張したアンプ、ユーザーの耳の形状や再生する楽曲などに合わせてサウンドのバランスを自動で最適化する「アダプティブイコライゼーション」の3つが効いているようだ。出力音圧レベルも第2世代のAirPodsから向上している。試聴を始めた当初はバランスが低音域にやや偏っているようにも感じたが、鳴らし込んでみるとすぐに中高音域とのつながりがスムーズになって、一体感の豊かなサウンドに満足した。さらに聴き込んでみると、静かな室内と賑やかな屋外では、AirPodsの音のインプレッションがわずかに変わることに気が付いた。開放型のイヤホンなので、音楽再生・ハンズフリー通話のサウンドを騒々しい屋外でもしっかりと聴けるように、中低音域の伸びやかさを強調したチューニングに整えているのかもしれない。アダプティブイコライゼーションは「耳の中」のアコースティック環境を検知して再生音を最適化する機能なので、外部の環境音に影響を受けることは基本的にはない。突発的に大きな環境ノイズにさらされても、イヤホンの再生音量が合わせて大きくなるようなこともなく、リスニング感はとても安定している。混雑している電車の中で使ってみたが、iPhoneのボリュームは60%前後のレベルで音楽だけでなく、映画やドラマのダイアローグがしっかりと聴き取れた。iPhone 13 Proに接続してApple Musicの楽曲を試聴した。上原ひろみのアルバム『Silver Lining Suite』から「ジャンプスタート」はピアノの躍動感、弦楽器の艶っぽい音色が活き活きと煌めく。低音域の印象がとてもふくよかで温かい。第2世代のAirPodsに比べると中高音域の暴れが一段と抑えられスムーズになったことがよくわかると思う。ボーカルの楽曲は原田知世のアルバム『恋愛小説2~若葉のころ』から「秘密の花園」を試聴した。声の質感がとても素直に引き出され、特にボーカリストの透明な声の特徴を繊細、かつリアルにAirPodsは引き出してくれる。輪郭線の描き込みは丁寧でありながら大胆。ぐんと前に迫り出してくるボーカルの迫力に引き込まれた。ピアノ、エレキベースの低音が深く沈み込み、演奏の足元をどっしりと固める。エレキギターの和音がゆったりと響き甘いハーモニーを重ねて描いた。ドラムスは高域の解像度も高く滑らか。細かなハイハットの余韻が静寂と爽やかに溶け合うイメージも秀逸だ。■空間オーディオのダイナミック・ヘッドトラッキングに対応新しいAirPodsは空間オーディオに対応するコンテンツの再生時、顔の方向転換に対してコンテンツの音をあるべき位置に定位させる「ダイナミック・ヘッドトラッキング」に対応した。これでダイナミック・ヘッドトラッキングが使える、AirPods Pro/Maxに続く3番目のイヤホンが誕生した。Apple TV+で配信がスタートしたSFドラマ『インベージョン』のシーズン1を視聴した。物語中盤の、宇宙ステーションのロケット打ち上げのシーンではエンジン噴射の豪快な低音をずしんと腹の底に響かせる。アクションシーンの多い映画やドラマを見ると、AirPodsのサウンドが新旧世代間で様変わりしたことが本当によくわかる。打ち上げ成功に歓喜する宇宙センターに鳴り響く拍手の効果音を丁寧に描く、解像表現力の高さも新しいAirPodsの魅力。「エイリアンに地球人類の存続が脅かされる」というシリアスなSFドラマの緊張感を、AirPodsのリアリティあふれるサウンドが存分に引き立たせてくれるだろう。■音もれをしっかりと抑制。クリアな通話音声AirPodsは開放型のイヤホンなので、音漏れも気になるところかもしれない。第2世代のAirPodsと聴感上のボリュームを近づけて音漏れの具合を比べてみたところ、新しいAirPodsの方が特に高音域のリークが抑えられているようだ。開放型のイヤホンなので、装着した状態でも屋外の環境音、隣にいる人の話声などが漏れ聞こえてくるものの、音楽再生やハンズフリー通話を始めると第2世代のAirPodsに比べてサウンドがしっかりと聴こえてくる。だからこそ、筆者は新しいAirPodsにあえて「外音取り込み機能」を付けても良かったのではないかと思う。FaceTimeアプリではHD高音質の音声通話が行える。内蔵マイクによる通話音声の品質は第2世代のAirPodsよりもノイズ感が減り、通話相手に話者のクリアな声を届けられるようになった。通話相手の音声を聞く方もまた、音声の輪郭がボールドに描けるようになっている。iOS 15からFaceTimeの通話時に空間オーディオによる立体的な音声コミュニケーションが可能になった。新しいAirPodsがあればより、通話相手が目の前にいて話しているようなリアルな音声コミュニケーションが実感できるはずだ。■アップルらしさが光る機能を隅々までチェックその他、第3世代のAirPodsに新しく搭載された機能の使い勝手をチェックしてみよう。「肌検出センサー」は、イヤホンの「自動耳検出」機能による着脱検知の精度を高めるため新規に開発され、新しいAirPodsに初搭載された。多くのイヤホン着脱検出機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホンの場合、同様の機能を光学センサーで実現している。なかには人の肌ではない箇所に触れてもセンサーが反応してしまい、バッグやポケットの中で音楽再生を始めることもあるという。デュアル光学センサーにより自動耳検出を行うAirPods Proと比べてみたが、本機の機能は完成度が高いため差は出なかった。耳からの着脱には正確に反応するし、衣服の上からイヤホンを体に当てがってみても誤動作はおきなかった。アップルがより高精度なセンサーの開発に踏み切ったことで、今後、他社製品の間でも肌検出センサーがトレンドになるかもしれない。新しいAirPodsもまた、アップルのデバイスが対応する「探す」アプリによるBLEベースの探索に対応する。今年の10月からAirPods Pro/AirPods Maxがファームウェアのアップデートにより「探す」ネットワークをサポートした。アプリから「探す」機能を選択した際のユーザーインターフェースも変わり、見当たらないAirPodsのイヤホンに近づいているのか、あるいは遠ざかっているかを知らせてくれる。同じ使い勝手が新しいAirPodsで実現されている。MagSafe充電器によるワイヤレスチャージにも対応した。一般的なQi規格に対応するワイヤレスチャージも従来通り利用できるのだが、MagSafe充電器の方がケースがマグネットで吸い付き固定されるのでより安心だ。◇サウンドと機能の両面から、新しいAirPodsは着実なステップアップが実感できる完全ワイヤレスイヤホンになった。ANC機能を搭載する完全ワイヤレスイヤホンの中には1万円前後で買える製品も増えているが、やはりiPhoneやiPadなどAppleのデバイスとあらゆる面で親和性が高く、サードパーティによる「AirPods専用アクセサリー」が今後増えてくることも期待すると、新しいAirPodsに2万円を投じる価値は大いにある。また特にサウンドは大きく様変わりしているので、既に第2世代のAirPodsやAirPods Proを愛用している方も、新しいAirPodsを積極的にコレクションに加えて良いと思う。
山本 敦