沿って, Uav-jp 22/03/2023

北朝鮮ミサイルの液体燃料アンプル化とは何のことなのか推定

 北朝鮮が1月5日に発射した「極超音速ミサイル」と自称するミサイルは、翌日の公式声明で燃料アンプル系統に対する信頼性も検証したと説明がありました。この燃料アンプルという言葉は昨年9月28日に発射された「火星8」でも翌日の説明で登場していたので、今回で2回目の確認となります。

 암풀(アンプル)とは「ampoule」のことで、言葉の意味は「密閉」であり、おそらく腐食性の強いミサイル用の液体燃料を充填したまま長時間待機できるようになったことを指すものと思われます。

 ミサイルは飛距離とペイロードを稼ぐ為に燃料タンクを含む自身の構成部品を軽量化しなければなりません。しかし腐食性の強い液体燃料に触れる部品があまりにも軽く薄いと侵食されて長時間は耐えられず、危険な液体燃料が漏れ出してしまいます。ミサイル構成部品を軽量化しながら燃料充填待機時間を増やすのは、相反する要求を同時に実現する技術が必要になります。

参考:ロシア軍事用語の「アンプル化されたロケット」

 例えばロシア国防省の公式サイトにある軍事用語辞典に掲載された項目「Ампулизация ракеты (アンプル化されたロケット)」が良い参考になるでしょう。

北朝鮮ミサイルの液体燃料アンプル化とは何のことなのか推定

 北朝鮮はミサイル技術用語の多くをロシアから導入しているので、この言葉が同じ意味を指している可能性は高いと思われます。このロシア軍事用語辞典ではアンプル化されたロケットについて、燃料タンクと配管を完全に密閉すること、燃料を充填しタンク内の必要な圧力を維持することなどを実施して、燃料を入れっ放しにして長期間待機し続けるシステムが説明されています。

 特にロシア軍の固定サイロ配備の巨大な重ICBMは、入念なアンプル化技術によって10年単位の非常に長い期間の液体燃料充填待機を可能としています。

 北朝鮮の言う液体燃料のアンプル化がどこまでの技術レベルを指すのかはまだよく分かっていません。古くからあるスカッド短距離弾道ミサイルでも燃料を充填した状態で条件により一週間から二カ月間ほど待機できるとされているので、この程度なら以前から保有している技術の筈です。

 しかし北朝鮮は2021年9月29日の公式声明で火星8について「初めて導入されたアンプル化されたミサイルの燃料系統」と言及しています。初めてと言っている以上、古いスカッドで実装済みの技術のことを言っているとは思えません。もしかするともっと長い期間、半年から年単位を燃料充填状態で待機できるようになった可能性があります。

アンプル化とは密閉化でありカセット交換式のことではない

 なお、一部の日韓の報道ではアンプル化について「液体燃料を事前に容器に詰め、発射するたびに容器をミサイルにはめ込む方式を指すとみられる。」という間違った説明がされていましたが、これは物理的に不可能です。ミサイルに内蔵された主推進剤用の充填済み燃料タンクは大きく重く、殻は薄くて弱く強度が低いので気軽に取り外しができる構造ではありません。そもそも充填済み燃料タンクはミサイルの重量と全長の大部分を占めています。そのような大きく重く弱い構造の部品を壊れないように慎重に入れ替えるだなんて、いっそミサイルを丸ごと交換したほうが早いし楽という本末転倒なことになってしまうでしょう。

 以下は間違った解説の報道です。

 韓国の大手通信社「聯合ニュース」が間違った解説をしたので、多くの韓国メディアがこれを転載、一部の日本メディアもそのまま載せてしまいましたので、十分に注意してください。