沿って, Uav-jp 20/01/2023

AnkerグループのオーディオブランドSoundcore、躍進の背景とは(リアルサウンド)

写真=林直幸

AnkerグループのオーディオブランドSoundcore、躍進の背景とは(リアルサウンド)

音楽、映像などのエンタメコンテンツを楽しむ際にかかせないオーディオ製品。イヤホンやスピーカーなど、数ある製品にはどのような企画立ち上げの思いや開発者らの努力が詰まっているのだろうか。連載「エンタメを支えるメーカーの裏側」では、オーディオライター・折原一也がメーカーの裏側に迫り、開発ストーリーを紐解いていく。【写真】Soundcoreの新製品イヤホンAnkerグループといえば、モバイルバッテリーや充電器でおなじみの中国発のメーカーだが、最近は同社がオーディオブランドとして打ち出しているSoundcoreの評価も高い。完全ワイヤレスイヤホンやBluetoothスピーカーなどで充実のラインナップを誇り、欧米や国内ブランドが強かった日本で、「価格を超えた音を聞かせる」と音楽ファンの心をつかんでいる。高性能ながら手が届きやすい価格を実現した開発秘話や製品へのこだわり、音楽や映像体験との相性について、日本側で企画・開発に携わるアンカー・ジャパンの担当者に話を聞いた。・Ankerから独立してSoundcoreを立ち上げる折原:Ankerはなぜオーディオ製品に取り組み始めたのでしょうか?伊藤敬介(以下、伊藤):Soundcoreは2018年4月にチャージング関連製品を扱うAnkerから独立したオーディオブランドです。Ankerとして培ってきた充電関連の技術やパソコンの周辺機器を開発してきた技術はイヤホンやスピーカーに活かされていますが、ガジェットとして製品を求める顧客とオーディオ製品を求める顧客のニーズは違います。Soundcoreはオーディオファンの方に満足していただけるような最先端の技術を追い求め、同時に我々の強みでもある「手の届きやすい価格」で製品を提供するブランドです。折原:開発拠点や開発体制について教えてください。檜山達矢(以下、檜山):Ankerグループ全体ではグローバルで研究開発関連の人材が1,000人以上在籍しており、主に中国の深センに開発拠点を置いています。我々は日々、日本のお客様から寄せられる声や消費者ニーズを品質担当、開発担当に伝えて改善の提言をしております。折原:Soundcoreで販売されている製品は世界各国で共通の製品ですか。それとも日本で販売されているものは日本仕様でしょうか。伊藤:基本的にはグローバルで共通の製品を販売しております。ただし、ニーズは国や地域により異なるので、日本側で販売するかしないかを選定しているものもあります。折原:日本ではどのような製品を選んで販売しているのでしょうか。市場の特性として日本をどう見ているのでしょう。伊藤:オーディオは各国でそれほど大きくニーズが異なりませんが、日本独自で求められる要素もありますので、お客様の多様なニーズに合わせ、同じ価格帯でもいろいろな特徴のある製品をラインナップしています。とくにAmazonのレビューを重視していて、お客様からの製品に対するニーズや改善提案は製品の開発や導入の意思決定をサポートする大きな要素の一つです。・新製品「Soundcore Liberty 3 Pro」がLDACに対応し、高音質化を目指した理由折原:完全ワイヤレスイヤホンの新製品「Soundcore Liberty 3 Pro」が発表になりました。最上位機種としての特徴を教えてください。伊藤:Soundcore史上最高の音質と、進化したAnker独自技術のウルトラノイズキャンセリング機能が大きなポイントになります。音質面の特徴は2つあります。ひとつはコーデックですね。ソニーが開発したワイヤレスオーディオ用コーデックLDACに対応しており、ハイレゾ音源の再生が楽しめます。お客様のお声から、ワイヤレスイヤホンにおけるLDACの対応に、早い段階から着手していたことで今のタイミングで製品化することができました。もうひとつはA.C.A.A 2.0(同軸音響構造)という独自の音響構造です。もともと我々の完全ワイヤレスイヤホンは低音に強みがあったのですが、本製品はそれに加えて中高音域のクリアさが際立っています。低音と高音それぞれに強いドライバーを搭載したデュアルドライバー構造なので、すべての音域が高い音質で再生できます。従来のSoundcoreの完全ワイヤレスイヤホンでは体験できなかった音質を楽しめるのではないかなと思っています。ノイズキャンセリングは、Anker独自技術のウルトラノイズキャンセリング 2.0を搭載しています。ノイズは屋内や屋外、交通機関などによって周波数や大きさが異なります。これをイヤホンが自動で検知してノイズキャンセリングの強さを調整し、適切な強度で利用できるようになっています。折原:LDACの採用に至ったのは何がきっかけだったのでしょうか。伊藤:ブランドとして、音響機器に真摯に向き合っていきたいということが一番の理由です。弊社では日本国内でもお客様と1対1でインタビューをする機会を定期的に設けてじっくりとニーズをお聞きして、本社の開発担当部署へとフィードバックをしています。インタビューを通してわかったことは、音質を求めているお客様はヘッドホンや有線タイプを使い、完全ワイヤレスイヤホンの音質については少し諦めている部分があるということです。ただ、本当は完全ワイヤレスイヤホンでもヘッドホンや有線イヤホンと同様に、良い音質で聞きたいというインサイトがあるということがわかり、「お客様の声を聞いて製品開発に生かす」という会社のフィロソフィーを実現する良い機会と考え、採用しました。折原:ウルトラノイズキャンセリングは技術的にどのような工夫をしているのでしょうか。檜山:最大の特徴は、周囲の環境とユーザーの聴覚特性に合わせてノイズキャンセリングの効き方を最適にできることです。ノイズキャンセリングを強くするだけでは音質が犠牲になるし、人によっては圧迫感を感じることがあります。ノイズの大きい場所ではしっかり効いて、小さいところでは不快感がない程度に自動で調整しています。前モデルの「Soundcore Liberty 2 Pro」にも搭載しているHearID機能は、専用アプリを通じてユーザーの音楽の聞こえ方をテスト・分析することで、聞き取りやすい周波数帯などを把握してユーザーに合ったイコライザー設定を可能にするものです。新製品の「Soundcore Liberty 3 Pro」ではこのHearIDの機能をノイズキャンセリングにも応用し、ユーザーに合ったノイズキャンセリング効果を自動で調整できる機能を搭載しました。同じノイズでも人によって聞こえ方に差があるので、それを判別して最適な強度に調整するためです。これにより、不快感なく長時間つけていられるようなノイズキャンセリング機能に仕上がっています。音の聞こえ方同様、ノイズキャンセリングに関してもパーソナライズできる機能を付けたということです。・Soundcoreの豊富なラインナップは「多様化するニーズ」に合わせるため折原:Soundcoreは完全ワイヤレスイヤホンだけを見てもラインナップが多いと思います。機種ごとにターゲットとするユーザーはすみわけられているのでしょうか。伊藤:Soundcoreの完全ワイヤレスイヤホンでは大きく分けると、LibertyシリーズとLifeシリーズがあります。Libertyシリーズが特に音質にこだわる方に向けたモデルで、Lifeシリーズはカジュアルなモデルと認識していただければわかりやすいかもしれません。LibertyシリーズはAnker独自のA.C.A.A(同軸音響構造)を搭載している製品もありますし、「Liberty Air 2 Pro」は10層のナノレイヤーによる独自のPureNoteドライバーを使っています。Libertyシリーズはより音に対してこだわりを持って開発しているのです。音に関して言うと、好きな音楽ジャンルによって聞きたい音域が違うと思うので、Soundcoreアプリを使ってイコライザーを変更したり、自分好みにバランスをカスタマイズしたりと好みに合わせたイコライジングが可能なモデルを数多く用意しています。パーソナライズという考え方を重視しており、私たちが音を作り込むというよりも、調整できる余白を残してお客様に自分好みの音で楽しんでいただきたいと考えています。折原:ゲーミングモードは「Soundcore Life P3」から搭載した機能ですね。導入の経緯を教えてください。檜山:ゲーミングモードは音と映像のズレを極力なくし、ゲームの効果音や足音、アクション音などを強調して、より臨場感のあるゲーム体験ができるという機能です。ただ、「Sundcore Life P3」はゲームに特化したイヤホンではなくて、ゲームや音楽、通話などさまざまなシーンで使用いただきたいというコンセプトのもとで企画・開発され、あくまでも機能の一つとしてゲーミングモードを追加しています。「Soundcore Life P3」は過去にベストセラーとなった「Soundcore Life P2」のアップグレードモデルなのですが、お客様からいただいた意見をもとに音質を改善し、手に取りやすい価格帯ながらノイズキャンセリング機能も搭載しました。日常のあらゆるシーンでカジュアルに使っていただけるイヤホンとして開発したのですが、ゲームプレイ時にイヤホンを使用する方も多く、そういった方に向けて、より臨場感をもって楽しめる機能としてゲーミングモードを追加したのです。折原:完全ワイヤレスイヤホンの市場の今後について、どのようにお考えですか。檜山:過去の完全ワイヤレスイヤホン製品は、接続や音質が悪く、基礎的な性能が非常に乏しい時代がありました。そういった面では我々がここ数年で販売している製品は、音質や接続性を始め操作性や価格もご満足いただけるものを提供できていると自信を持っていますが、ユーザーによって使い方や感じ方、ニーズは多種多様になってきています。オーディオの世界はパーソナライズを追求しても終わりが見えないので、すべてのお客様に「この製品が一番」と言っていただける製品はないと考えています。例えばテレワークのような、今まで使われていないところでも完全ワイヤレスイヤホンが使われるようになってきたので、ニーズの多様化に合わせて完全ワイヤレスイヤホンのカテゴリーも多様化が進んでいくと思っています。伊藤:オーディオに関する要素とガジェット的な要素が交わっているのが完全ワイヤレスイヤホンととらえています。昔は価格帯が高ければ音質が良いだろうという考え方があったと思いますが、その視点だけに囚われていてはいい製品をお客様に届けられないと感じます。完全ワイヤレスイヤホンに求められるものが扱いやすさなのか、機能面なのか。どのようなニーズがあるのかを細かく見ていきながら、最適なものを世に送り出していけるといいなと思っています。

リアルサウンド編集部