完全ワイヤレス Beats Studio Buds を AirPods Pro、WF-1000XM4 と比較
■ 音の解像感が欲しい……
まず気になる音質から。ドルビーアトモス対応音源、通常のステレオ音源ともに試聴したところ、全体的にパサパサとしたサウンドで、軽すぎず重すぎない、明瞭感を重視したような印象です。
この点については、Beats独自開発のSoCに加え、ソースファイルをモニタリングするアルゴリズムが採用され、アルゴリズムの処理解析を1秒間に最大4万8000回もの速度で行うことなどが、効果として現れているようです。
実際、ボーカル込みの楽曲では、より耳元で鳴っている感がすごく、歌のないインストゥルメンタルな楽曲でも、バックコーラスやドラムなどが近くで響くようなイメージ。ANCをオンにして聴いた場合、没入感が高まるせいなのか余計にそう感じます。
あえてわがままをいうのであれば、AirPods Pro (3万580円)や WF-1000XM4(3万3000円)に比べて解像感が足りず、音の広がりもやや狭いです。
さて、ここで念のため少しだけ、空間オーディオに関する注意点に触れておきます。
まず固定のサラウンドスピーカーや映画館のように、対応コンテンツの音の定位や顔の向きを変えても、あるべき方向から音源が聞こえる「ダイナミック・ヘッド・トラッキング」には非対応。
このダイナミック・ヘッド・トラッキングは、AirPods Pro のジャイロスコープと加速度センサーのデータを使って、ユーザーの顔の向きなどを検知し、なおかつApple TV+などの対応コンテンツと組み合わせてはじめて体験できる機能ですが、残念ながら Beats Studio Buds には対応しません。
また、現状では Apple Music のロスレスコンテンツの再生ができないほか、AirPods Pro で試すことが可能な「空間オーディオのデモンストレーション」や「イヤーチップ装着状態テスト」が、Beats Studio Buds では使えないのも留意点となります。
ただ、個人的には2万円を出さずにこの音質(しかもドルビーアトモス対応)を得られるのが、うれしいところ。付加機能はそぎ落とされているものの、リスニング目的であれば Beats Studio Buds でも十分な気もします。
■ 空調設備の音や人の話し声をかき消すノイキャン
続いて音楽再生を止めて、ANCと外部音取り込みをそれぞれ切り替えてみました。ANCをオンにしてカフェに行ってみると、空調設備の音や人の話し声はかなり聞こえなくなりますが、車や鉄道の走行音までは消せないようです。個人的には、あともう少しだけノイキャン効いてほしいなぁ……と思いました。
反対にANCをオフにして、外部音取り込みをオンにしたまま楽曲を再生すると、AirPods ProやWF-1000XM4のほうが楽曲本来に近い音だと思いました。この点だけで比べてしまうと、上記2機種か Beats Studio Buds のどちらを選ぶべきか迷います。
通話でも Beats Studio Buds を使ってみました。本体に内蔵されたデュアルビームフォーミングマイクで、発話者の声を拾ってくれるため、静かな室内であれば通話相手に自分の声が届いていました。一方、雑音の多い駅などではやや聞き取りにくい結果に。これは使用環境によるものでしょう。
また、クラス1のBluetooth接続により、音の途切れは少なく安定した通話、視聴ができるのも Beats Studio Buds の特徴。加えて、片側のみ装着してながら聴きする──なんて使い方もできるのもうれしいところです。
続いて試したのはAirPods ProやWF-1000XM4と比べて、付け心地がどう違うのか、という点。 ポリウレタンフォーム素材の「ノイズアイソレーションイヤーピース」を採用したWF-1000XM4は、接地面が多く密閉度を高めます。ただ、体温により変形するので、人によっては装着した感想が異なるようです。
Beats Studio Buds の装着時に驚いたのはその軽さです。片側の重さは5g。上記2機種ほど何かを耳穴に入れている感覚はありません。一日中着用しても驚くほど快適──といったら大げさですが、半日ほど付けっぱなし、音楽流しっぱなしの状態でも、耳の疲れを感じさせない軽さと形状なのでしょう。
また、左右に激しく首を振ってみたとき、耳穴からポロッと落ちることもありませんでした。もし、サイズが合わなければ、付属の3サイズのイヤーピースを付け替えることが可能です。
■ Android / iOS の2台持ちにも打ってつけ?
最後に使い勝手をチェックしてみます。音質やANCなどのほかに注目すべきは、やはり Android / iOS 双方との連携性です。
Beats Studio Buds は2014年にアップルの傘下となったBeatsブランドの製品でもあるため、iPhoneやiPadに近づけてケースの蓋を開くだけで、専用アプリを介さずにペアリングを行えるのが大きなメリットとなっています。
Android 6.0 以上のスマートフォンとのペアリングを行う場合、Google Fast Pair によってデバイスの画面にポップアップが表示され、それをタップすればiOSと同様、スムーズな接続が可能。
Android向けアプリでは、バッテリー残量の確認やファームウェアアップデートの実行が可能ですが、1点気になったのはイコライザーや、WF-1000XM4のように付属のイヤーピースの中から自分の耳に合うサイズを判定するような項目が見当たらないこと。個人的には、かゆいところに手が届く、一歩踏み込んだような機能や項目が欲しいところです。
また、iPhoneやiPadの「探す」アプリだけでなく、Androidの「端末を探す」にも対応します。アップルによれば、この両方に対応したのは Beats Studio Buds が初めてとのこと。また、紛失しても付近にあれば音を再生して探せます。
上記のようにデバイス(あるいはOS)を限定しない仕様は、iPhoneとAndroidの2台持ちユーザーに刺さりそうですね。
ハードウェアとしては、アップルらいしいシンプルな操作感も売りのひとつとなっており、たとえば両側それぞれに備わる「b」ボタンを軽く長押しすることで、ANC / 外部音取り込みの切り替えや、終話、再生などの操作を行えます。
なお、このボタンはタッチセンサーではなく、マウスのクリック感に似ており、押したときにイヤホンが耳穴から外れることはありませんでした。ボリューム調整はイヤホン単体で行えず、接続したスマートフォンなどで行うしかなさそうです。
ちなみに、ANC / 外部音取り込みなど、合計3つのモードを切り替えるときに覚えておくと便利なのが、ボタンを押したときに聞こえるビープ音です。
聞こえ方としては、
ポポポンと音程が上がれば、ANC
ポポポンと音程が下がれば、外部音取り込み
ポンという単音が聞こえれば、オフ
といった具合です。
付属ケーブル(Type-C to Type-C)を使って充電することが可能なケースは、丸みを帯びて持ちやすいです(机上などに置いたときに自立しませんが)。5分の充電で最大1時間の再生が可能な、Fast Fuel 機能も搭載します。
駆動時間にも触れておきましょう。ANCや外部音取り込みモードがオンの状態で使用した場合、本体のみでも最長5時間。イヤホンを収納可能な専用ケースと併用すれば最長15時間を確保でき、ANCをオフにして使えば最長8時間 / 最長24時間まで延長できるとアップルは説明しています。
完全ワイヤレスイヤホンの市場には最近、ANCや11.6mmの大口径ドライバを備え、99ドル / 1万2650円のワイヤレスイヤホン ear (1) が登場し、ガジェッターの皆さんから熱い視線が注がれています。パワフルな重低音をうたう製品も出回っており、競争が激化する最中に “お買い得機” として名乗りを上げたのが Beats Studio Buds です。
Beats Studio Buds を選ぶ決め手になり得る理由としては、冒頭でも述べたように割引なしでも税込約1.8万円という点、そしてiPhoneとAndroidの両方で使えるという点を挙げたいと思います。
WF-1000XM4も売れ筋として注目されていますが、 Beats Studio Buds も購入の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
Beats by Dr. Dre Press Release