沿って, Uav-jp 29/07/2022

格安ホームカメラ「ATOM Cam」がさらなる進化--ペットや人を見分ける“エッジAI”はどう使える?

 1台たったの約2000円という驚きの低価格でクラウドファンディングに登場し、5月から開始した税込2500円の一般販売でも順調な売れ行きを見せているスマートホームカメラ「ATOM Cam」。シンプルな外観に似合わない多機能さが特徴だが、9月には監視用カメラに止まらない大きな進化を見せる。ポイントとなるのは、なんといっても「エッジAI」としての機能が強化されることだ。

ネットカメラの「ATOM Cam」が、一番身近な“エッジAI”になるかも

 ATOM Camはすでにモーション(動体)検知の機能を備えており、映像内に動きがあったときにスマートフォンにプッシュ通知しつつ、同時に録画を開始できるようになっている。今度はこれに「犬や猫」あるいは「人」を見分けて通知・録画する機能が追加されるのだ。こうした検知機能を実現できるのは、ATOM CamがAI処理可能なチップを搭載しているからこそ。スマートフォンやサーバー、ネットワークに負荷をかけることなく、エッジ端末であるカメラ単体で画像解析する。そんなATOM Camの新機能を一足先に試すことができたので、ご紹介しよう。

 ※今回紹介する機能は開発中のため、正式リリース時とはアプリ画面の表示内容などが異なる場合があります。

コンパクトながら広角のフルHD映像。暗所撮影が可能でNAS保存にも対応

 最初にATOM Camについて基本的なところを説明すると、この製品は宅内のWi-Fiネットワークに接続して利用するネットワークカメラと呼ばれるもの。本体はほぼ5cm角のキューブ状をしたコンパクトなサイズで、電源ケーブル1本で動作し、高さや向きの調整が容易なマグネット内蔵のスタンド一体型ということもあって、設置方法の自由度も高い。

スタンドと一体になっており、カメラの高さ、向きをフレキシブルに変えつつ設置できる 電源ケーブル1本で動作 本体スタンドにマグネットが内蔵され、付属の金属プレートと両面テープを組み合わせることで自由度高く設置可能 このように逆さまに固定して使うこともできる

 カメラレンズはおよそ130度の視野角をもち、広い範囲を一度に撮影できるほか、月明かり程度の明るさの場所ならフルカラーで鮮明に映し出せる高感度のCMOSセンサーを備える。さらに赤外線カメラ機能の「ナイトビジョン」もあり、モノクロ映像ながら暗闇でもくっきりと映し出すことも可能だ。最近では、8月21日22時半ごろに関東上空で大きな流れ星(火球)が目撃されたが、ATOM Camではその映像が鮮明に捉えられていて話題となった。

 カメラ映像は専用のスマートフォンアプリを使ってリアルタイムに表示でき、映像内で何らかの動きがあったときには自動で録画を開始する「モーション検知」にも対応する。自動で録画された映像はクラウドに保存されるが、別途microSDカードを装着すれば、常時録画や任意のタイミングでの手動録画もできるようになっている。

(左)ATOM Camの専用スマートフォンアプリ、(右)ATOM Camで捉えた筆者の自宅リビングの様子。フルHD解像度に対応する スマートフォンを横置きにしてフルスクリーン表示することも可能 暗闇でもくっきり描写する赤外線カメラ機能「ナイトビジョン」

 単に映像を見たり、録画したりするだけでなく、断続的にコマ撮りした映像を元に早回し動画を生成する、いわゆるタイムラプス機能もある。防犯目的から子供やペットの見守り、観葉植物などの観察まで、あらゆる用途に適したネットワークカメラとなっているのだ。

 さらに、これから一般公開される新バージョンのアプリでは、録画映像を同じネットワーク上のNAS(Network Attached Storage)に保存することも可能になる。これまではカメラ本体に装着したmicroSDカードにしか保存できなかった常時録画の映像を、ネットワーク上のNASに転送して保存できるのだ。microSDカードだと容量の問題から長期間の録画映像を残しておくのが難しかったが、大容量のNASであればそんな問題もあっさり解決できるだろう。

大事なデータのバックアップなどに使えるNAS。ここにATOM Camの録画映像を直接保存できる (左)アプリのカメラごとの設定画面で「NASへの録画転送」を選択、(中央)映像を保存したい期間やNAS内の保存先フォルダなどを指定するだけで映像が自動でNASに転送されるように、(右)長期間の録画履歴から目的の箇所を見つけやすいよう録画映像の2~8倍速再生にも対応するなど、細かな使い勝手も徐々に向上している

「犬猫検知」で飼っているペットの健康管理が可能に

 さて、いよいよ本題の「エッジAI」だ。9月にリリースされるもののうち、最も大きなポイントの1つがこのエッジAIによる「犬」と「猫」の検知機能となる。これまでの単純なモーション検知に加えて、そのモーションのなかでも「犬」もしくは「猫」と見られるものを捉えた場合には、別途「犬猫が検出された」旨の通知がスマートフォンに届くようになる。

(左)通常はこのような「動体が検出されました」という通知が届く、(中央)犬猫を検知した場合は「犬猫が検出されました」の通知が、(右)通知をタップすると、検知したときの録画映像を見ることができる

 すでに説明したように、エッジAIとして動作する「犬猫検知」機能では、カメラ本体が搭載するチップのAI処理機能によって画像解析して判別しているため、スマートフォン側で何らかの検出処理が発生するわけではないし、サーバー側に処理を任せるようなこともない。解析はすべてカメラ単体で行われ、プライバシー的にも、動作レスポンス的にも、エッジAIのメリットを活かした仕組みで処理されるようになっている。

格安ホームカメラ「ATOM Cam」がさらなる進化--ペットや人を見分ける“エッジAI”はどう使える?

 犬猫検知の用途として考えられるのは、最も実用的なところで言うと、犬や猫の健康管理だろう。最近では自動給餌装置で餌やりしたり、掃除を自動化するトイレで常に清潔さを保っていたりする家庭も少なくないようだ。仕事で家を空けることの多い飼い主にとっては、世話を自動化するアイテムは便利だし、不可欠なものでもあるけれど、その一方で飼っている犬や猫の体調を把握しにくくなるというデメリットもある。そこでATOM Camの犬猫検知機能が活きてくる、というわけ。

 たとえば、ペットの食事場所付近にATOM Camをセットしておくことで、犬猫がそこに現れれば検知し、同時に通知が送られ録画もしてくれる。飼い主が家を留守にしていても(在宅勤務で別の部屋にこもっていても)、いつ餌を食べているかがはっきりわかり、その回数が少ないようであれば体調がよくないのかな、と察することができる。またトイレ付近にATOM Camをセットしておけば、同じように排尿・排便の頻度が明らかになるので、こちらもその回数によって体調の異変に気付けるかもしれない。

猫が食事場所に来たときの映像(スクリーンショット)。カメラの視界に猫が入ってきた瞬間に検知し、録画を開始している 同じく猫がトイレへ用を足しに来たときの映像(スクリーンショット)

 飼い主以外でも活用できるチャンスはある。筆者の自宅では犬や猫は飼っていないが、近所に住む何匹かの猫ちゃんたちが時々ガレージにやってきて集会を開いている。ただ、近づくとすぐに逃げられてしまうのでその様子を伺い知ることはできないし、そもそも集会自体が不定期で開催していることにすら気付けないことも多い。しかしATOM Camをあらかじめセットしておけば、集まり始めた猫ちゃんたちを検知して、プッシュ通知で気付けるだろう。さらにカメラ映像を通して集会の様子もバッチリ覗けるに違いない。ナイトビジョン機能のおかげで真夜中の集会でも問題ないはずだ。

 というわけで、さっそくガレージにATOM Camをセットしたのだが、よく考えてみると季節は真夏。一切の空調も、断熱材もないガレージは、雨風はしのげるものの強い日差しのせいで日中はサウナ状態になっている。夜間も昼間の熱が残り、とても涼しいとは言えない。そんな過酷な環境のガレージに猫ちゃんたちが寄りつくはずもなく、ただただ散らかったガレージの内部を映し出すだけのカメラになってしまった……。

猫ちゃんたちがたびたび集会を開いているガレージにカメラをセットしてみたのだが…… (左)待てども待てども現れてくれない、(右)夜間にモーション検知はあったが、ほとんどが通行するクルマのライトに反応したもの。真夏はさすがに居心地が良くないようで、肝心の猫ちゃんたちは結局一度も姿を見せず

 今回、近所の猫ちゃんたちを激写することはかなわなかったが、ATOM Camの開発元によると、当初は犬と猫のみながら、将来的には他の動物も個別に検知できるようにする計画があるとのこと。ユーザーからの熱い要望が多くあれば、鳥やハムスターなどにも対応してくれるかもしれない。個人的にも、ベランダに餌をまいておいて、そこにやってくる鳥の様子を撮影してみたいところだ。

人の姿を判別して通知・録画できるようにする「人体検知」機能

 エッジAIの機能としてリリースされるもう1つの目玉が「人体検知」機能。こちらも犬猫検知と仕組みとしてはほぼ同じだ。モーション検知するなかで、AIによる画像解析の結果、それが人間であると判断されれば、「人体が検出された」旨の通知が送られ自動録画する。もちろんエッジAIなのでカメラ単体での解析処理となる。処理内容や結果がインターネットを通じて送信されることもないから、プライバシー面でも安心して利用できる。

 既存のモーション検知ではなく、人体検知機能を利用するシチュエーションとしては、被写体に人が入っているかどうかによって通知・録画を実行するかどうか決めたい場面だろう。たとえば自宅の敷地周辺をATOM Camで監視するとき、近くの道路を歩く人(侵入してきそうな人)は検知したいけれど、横切るクルマの検知は不要かもしれない。モーション検知だとどちらも「映像に変化があった」として区別なく通知されてしまうが、人体検知機能なら人の姿が見えたときだけそれに気付けるようになる。

(左)人の姿を捉えると「人体が検出された」という通知が届く、(中央)目の前の道路を通り過ぎるクルマは「モーション検知」として通知・録画、(右)人の姿らしき場合は「人体」として認識される

 より具体的には、玄関前や庭先を映して侵入者を監視するときはもちろん、家族の帰宅を知りたいときにも使える。オフィスの受付にセットして来客にいち早く気付けるようにすることも考えられるし、工事現場付近で安全のために人の通行を把握するような使い方もできるかもしれない。何かを撮影したいときに、あえて自分の姿を映して録画開始のトリガーにする、ジェスチャー撮影のような使い方もできそうだし、工夫次第でATOM Camのいろいろな魅力を引き出せるに違いない。

 犬猫検知でも同様だが、映像内に人の他に動くものがあっても、それとは別に通知・録画されるので混乱することがないのは便利だ。従来のモーション検知では使い勝手がよくなかったシーンでも、人体検知なら活用しやすく、応用の幅も広がる。主に日常生活の安全・安心につながる用途が多いと思われるが、そのために複雑な設定を必要とせず、カメラ単体で簡単に実現できてしまう手軽さは他のネットワークカメラにはないものだ。

オプションのセンサーも登場予定。ATOM Camはスマートホームのハブになる!?

 5月の発売から4カ月、ハイペースでアップデートを重ねて機能改善を施し、進化し続けているATOM Cam。将来的には、今回紹介したエッジAIに止まらない、さらなる新展開も予定されているという。もともと「将来の拡張用」として用意されていたカメラ背面のUSBポートだが、ここに接続するオプションとして外部機器と通信するための「ドングル」が追加で発売され、連携する外部機器として「開閉センサー」「モーションセンサー」などが登場するという。

背面に設けられたUSBポート。ここにドングルを装着することで、専用の外部周辺機器と連携することが可能になるという

 センサーでドアや窓の開閉を検知したとき、あるいはカメラを設置しにくい場所にセットしたモーションセンサーで動体を検知したとき、それらのタイミングで通知や録画をする、といった連携が可能になるようだ。センサーで検知してから一定時間後に通知・録画を開始する設定もできるとのことで、ドアや窓の閉め忘れを気付けるようにする目的にも使えるかもしれない。

 周辺機器の充実によりセキュリティツール、もしくはスマート機器としてのポテンシャルがさらに高まりそうで、ATOM Camは将来的にスマートホームのハブのような役割を果たすことになるのだろうか。ネットワークカメラの枠を超えたエッジAIカメラとして、ますます進化していくATOM Camの今後から目が離せない。

(取材協力:アトムテック)