米スタートアップTortoise、リモート操作で配送ロボット実用化へ 小売大手と提携
米スタートアップのTortoise(トートイズ)がスーパーマーケットチェーン北米大手Albertsons Companies(アルバートソンズ・カンパニーズ)と提携し、リモート制御によるデリバリーロボットを活用したパイロットプログラムを開始したことを2021年3月11日までに発表した。
新型コロナウイルスの蔓延を契機に注目が高まり続けている配送ロボット。この記事では、Tortoiseの取り組みをはじめ、米国における自動運転技術を活用したラストワンマイルに向けた取り組みをまとめてみた。
記事の目次
■Tortoiseの概要
ラストワンマイル向けソリューションを開発
Tortoiseは、マイクロモビリティのシェアサービスやロジスティクスにおけるラストワンマイルの課題解決に向けた技術開発を手掛ける2019年設立のスタートアップで、シリコンバレーに本拠を構えている。
LyftやMicrosoftなどで技術開発を手掛けていたDavid Graham氏とUberなどでモビリティ戦略を指揮していたDmitry Shevelenko氏が共同創設者に名を連ねている。
移動サービス分野では、電動スクーター・キックボードといったマイクロモビリティのシェアサービス事業者向けに自律走行技術や遠隔操作技術を提供している。
乗り捨て可能な電動スクーターなどのシェアサービスは、毎日、あるいは定期的に各車両を集めて充電やメンテナンス、ステーションへの適正配置などを行う必要があるが、ここに遠隔操作技術を導入することで、労力を大幅に減らすことができる。
公式サイトでは詳細な技術やサービスに触れていないが、各種メディアによると、既存のモビリティにカメラや自律走行用の補助輪などを取り付けることでリモート操作を可能にするようだ。当面は純粋なリモートコントロールによってモビリティを操作するが、徐々に自律性の割合を増していく構えのようだ。
メキシコから配送カートをリモート操作
Albertsons Companiesとの提携では、この技術をラストワンマイル配送に応用している。電動車いすほどのサイズのカートを開発し、遠隔操作によってコンタクトレス配送を行う取り組みだ。
カートは最大時速7マイル(約11キロ)で、4つのコンテナに最大150ポンド(約68キログラム)を積載することができる。
実証では最大120ポンド(約54キログラム)の食料品などを配送する。顧客から注文を受けたストアが配送先住所やカート番号をTortoiseに伝送すると、遠隔地にいるオペレーターがリモート操作でカートを操り、歩道や道路脇を走行する。到着の連絡を受けた注文者が荷物を受け取ると、オペレーターがリモート操作で店舗までカートを戻す仕組みだ。
カリフォルニア州北部の一部地域でスタートしたAlbertsons Companiesとのパイロットプログラムは、当初はスタッフ同行のもと行うようだ。
リモート操作技術の詳細は明かされていないが、自動運転と異なりオペレーターが一台一台を操作する、いわば「高度なラジコン」のようなものと思われ、コストの低減効果に疑問符が付きそうだが、同社は人件費が安いメキシコから遠隔操作を行うことで、店舗から2マイル以内の配送において1回の注文ごとに6ドル削減できるとしている。
こちらも徐々に自律走行機能を搭載していく可能性が高そうだが、同社は安全性と早期社会実装を重視し、自動運転ありきではなく、リモート操作による配送ロボットでコンタクトレス配送を実現していく計画のようだ。
■米国における配送ロボットの取り組み
Starship Technologies:配送回数100万回突破、Save Martと提携も
配送ロボット分野で世界をリードする米StarshipTechnologies(スターシップ・テクノロジーズ)は2021年1月、創業(2014年)からの累計配送回数が100万回に到達したことを発表した。50万回達成は2020年秋ごろで、この数カ月で大きく実績を伸ばしているようだ。
アリゾナ州立大学やミシシッピ大学、カリフォルニア大学アーバイン校・ロサンゼルス校、オレゴン州立大学など大学を中心にエリアを拡大しており、現在15~20エリアで配送を行っているという。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、Blaze PizzaやBruin Buzz、Lu Valle、SouthernLightsといったピザやレストランからの配達を行っている。先端技術に抵抗が少ない若者を対象に、広大で道路交通法などの制限を受けにくいキャンパス内でサービスを展開していく戦略は大当たりのようだ。
2020年9月には、スーパーマーケットのSave Martと提携し、カリフォルニア州の旗艦店でオンデマンドによる食料品配送サービスを開始した。最大20ポンド(約9キログラム)の食料品を往復4マイル(約6.4キロ)まで配送可能という。
【参考】関連記事としては「自動運転導入は大学キャンパスから!?米で100大学導入計画」も参照。
Nuro:商用許可取得、サービス本格展開へ
車線を走行する自動運転タイプの配送ロボットを開発するNuroは、2018年にスーパーマーケット大手のKroger 、2019年にドミノ・ピザとウォルマート、2020年にCVSPharmacyとそれぞれ提携し、実用実証を進めている。
2020年12月には、カリフォルニア州車両管理局(DMV)から自動運転車の商用展開に関する認可を取得したと発表した。プリウスの改造車や自社開発したオリジナル車両「R2」を使用し、パートナー企業とともにサービス展開を図っていく計画だ。
【参考】関連記事としては「自動運転車での商用デリバリー、米Nuroがカリフォルニアで認可を初取得!」も参照。
Robby Technologies:ペプシコと提携、大学構内でサービス提供
2016年創業のRobby Technologiesも2019年1月までに、スナック・飲料企業のPepsiCoと提携し、カリフォルニア州のパシフィック大学で飲料などを配達するサービスを開始している。
自社開発した「Robby2」を改良したデリバリーロボ「Snackbot」を使用し、キャンパス内に設けた50以上のエリアに配達を行っている。
Udelv:ウォルマートなどと提携 乗用車改造タイプの配送ロボットを実証
乗用車を改良した自動運転配送サービスを手掛けるUdelvは、2018年にDraeger’s Marketやウォルマート、2019年にはスーパーマーケットチェーンのH-E-B Grocery Companyとそれぞれ提携し、アリゾナ州やテキサス州などで商品配達の実証を行っている。
■【まとめ】配送ロボット分野への参入相次ぐ米国
上記以外にも、EC大手のアマゾンが自社開発した「Amazon Scout」、物流大手のFedExが「Roxo」を活用した配送実証にそれぞれ取り組んでいる。両社は、こうした配送ロボットの全米合法化に向けても動き出しているようだ。
このほかにも、小型タイプの開発を進めるEliportやKiwibot、Nuroのような中型タイプの開発を進めるRefraction AI、乗用車モデルではPony.aiなどのロボタクシー開発企業も実証を行っており、プレイヤーは増加する一方だ。
新型コロナを機に注目を集める格好となった配送ロボットだが、利便性が広く認知されれば、導入を試みるエリアや企業はまだまだ増加しそうだ。
【参考】関連記事としては「楽天・三木谷氏が狙う「超ドル箱ビジネス」!自動運転ロボ配送、実証実験次々」も参照。