【映像+】『ブレードランナー 2049』にコンセプト・デザイナーとして参加した若き日本人クリエイター、田島光二によるメイキング・インタビューとコンセプトデザインを初公開!!
映像+(EIZO PLUS)新しい映像が生まれてくる現場vol.10
『ブレードランナー 2049』
10月27日(金) 全国ロードショー配給:ソニー・ピクチャーズ
『ブレードランナー 2049』にコンセプト・デザイナーとして参加した若き日本人クリエイター、田島光二によるメイキング・インタビューとコンセプトデザインを初公開!!
STORY
2049年、貧困と病気が蔓延するカリフォルニア。遺伝子工学で生み出された人造人間 “レプリカント” 専門の捜査官ブレードランナーのKは、捜査の中でレプリカントの製造元ウォレス社の陰謀の存在に行き当たる。その真相を確かめるため、Kは30年前に姿を消した元ブレードランナー、デッカードの行方を追うのだが……。
INTERVIEW ── コンセプト・デザイナー 田島光二(ダブルネガティブ・バンクーバー)
田島光二によるコンセプトデザイン。Kと立体ホログラフィの会話シーン。ジョイのホログラムには相当の時間をかけ、あらゆるルックが模索された。
Q:今回はいつから参加して、何枚くらい、どんなコンセプト画を描かれましたか?
田島:僕が参加したのは2016年の冬からで、2017年の6月くらいまで描いていました。最初は建物のデザインを補佐的にやって、そこからだんだん看板やスピナーもまかされるようになって。あとは細かいプロップ、武器とかガジェットとか。全部で何枚描いたかは覚えていないですね。街のコンセプトデザインは、前作と建物の形や時代も違うので、どんな建物の種類があるのかを探るところからでした。あとは、「日本語の看板を作ってくれ」と言われて。僕が日本語の看板を全部やって、隣にいた韓国人の(ダブルネガティブの)同僚は韓国語の看板をやっていました。
Q:街並みのデザインは『ブレードランナー』でシド・ミードが描いたものを参考にしましたか? それとも全く新しく考えましたか?
田島:全く新しい感じです。最初の『ブレードランナー』のスタイルは壊さずに、ちょっと新しく。中国、香港の建物がわーっと連なっている感じ、九龍みたいな感じは参考にしました。建物は高いものだと40〜50階建くらいですね。建物も低いものから高いものまでいろんな種類があります。基準となるスタイルは最初の『ブレードランナー』から引き継いだ感じですね。シド・ミードの画集が会社(ダブルネガティブ)に置いてあって、それを見てスピナーを考えたりしました。ディテールの感じとかを参考にしたり。
Q:監督からは「こういうイメージ」という指示はありましたか?
田島:壁に囲まれていて、どよーんとした感じですね。東京のイメージに近いです。今年の夏に帰国したとき雨が降っていたんですけど、看板の光が雨に反射した感じが、監督のイメージに近かった。空気の層が厚い感じの、アジアのイメージですね。看板に関してはすごい自由で、特に指定はありませんでした。作品自体、いろんな国の看板がわーっと街中に溢れている感じだったので、日本語以外にもロシア語やアフリカのほうの言葉もあったり、いろんな言葉を混ぜているから、全部の文化のミックスみたいなイメージでしたね。
Q:看板は何枚くらい描かれましたか?
田島:看板だけでいうと、100枚以上描きましたね。文字は世界観に合わせて結構レトロ寄りでした。ネオンっぽい感じ。最初はラーメン屋とかから始めて。60パターンくらい描いたあとにもう何も思いつかないから、「自分の名前でも入れてこう」と思って「田島歯科医院」と描いたらすごい気に入ってもらって(笑)。色合いが気に入ったのかわからないんですけど、トレーラーにも出ています。3D看板は、わりとテクノロジーから考えました。どういうふうにプロジェクトされているのか、レーザーみたいなのか浮かび上がるのかとか。
Q:リテイクをもらったところはありますか?
田島:監督がこだわっていた、3Dホログラムのあるキャラクターに関しては「魔法やアニメっぽくなって欲しくない」とは言われました。映画の中でもキーになる存在なんですけど、それが偽物のように見えてしまうのは嫌だという。そこは僕が関わっていない時期も含めて、ずっとOKが出ていなくて1年以上かかりました。リアルに、本物に見えるように見せたい、と。ただリアルにしすぎるとただの人間になってしまうので……。あのときはみんな参ってましたね(笑)。1年以上はキツいですよ。
Q:監督からの言葉で印象に残っているものはありますか?
田島:日本語の看板を見たときに、日本のオーディエンスにとって違和感のないものにしてほしいと言われました。他の外国語に関しても、絶対にネイティブな人に違和感がないか確認してほしいと。
Q:スピナーのデザインについて。
田島:いろんなアーティストが描いているんですが、ダブルネガティブでやっていたのは警察のスピナーなどです。クライアントから渡されたシド・ミードやジョージ・ハルのスケッチをもとにリファインする、みたいなのもありました。鉛筆でシュッと描いてある絵を「レジェンドのスケッチです」と渡されて、リアルにしてほしいとか。
スピナーは全部3Dで作りました。鉛筆できたものを3Dにおこすところから始まったり、完全にゼロから僕が考えたデザインもあります。5台くらい作りましたね。あとは出来上がってリアルサイズで作ったけど、「どうもカッコよくないからどうにかしてくれ」と言われて、大枠は変えずに細かいところを変えていくという作業なども……。
やっぱりスピナーを描くときはわくわくしましたね。描いているときも『ブレードランナー』好きの同僚が後ろから「それはどうなんだろうな……」とか「俺なら……」とか言ってきたりするんですよ。その人は参加していないんですけど(笑)。
Q:映画に参加して。
田島:『ブレードランナー』はダブルネガティブの中でもファンが多いので、スタッフの思い入れが違いましたね。士気が高い感じがしました。前作の『ブレードランナー』が作られたとき僕はまだ産まれてもいなかったのですが、幼少期から周りには影響を受け継いだ作品が沢山あり、今回僕がその続編に関われたのはとても幸運なことでした。今後も次の世代へと繋いでいけるような誇れる作品を作れたらなと思います。
今作のために全く新しくデザインをしなおした、田島光二による警察用スピナーのコンセプトデザイン。
田島光二によるスピナーのコンセプトデザイン。映画内では上面があまり見えないため下面が集中的に描かれている。
田島光二(Kouji Tajima)/ Double Negative Visual Effects コンセプトアーティスト1990年生まれ、東京都出身。2011年に日本電子専門学校コンピューターグラフィックス科を卒業、2012年4月にダブル・ネガティブ(Double Negative)シンガポール支社へ入社、現在はバンクーバー勤務。コンセプトアーティストとして映画参加作品に『Pacific Rim: Uprising』(2018年公開予定)、『ブレードランナー2049』(’17)、『ワンダーウーマン』(’17)、『アサシン クリード』(’17)、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(’16)、『スター・トレック BEYOND』(’16)、『ブリッジ・オブ・スパイ』(’15)、『ゴジラ』(’14)、『ハンガー・ゲーム2 キャッチングファイア』(’13)、『ワイルド・スピード6』(’13)、『レ・ミゼラブル』(’12)など。キャラクターデザイナーとして『寄生獣』(’14)『寄生獣 完結編』(’15)、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(’15)。
田島光二による、広告のネオンがきらめく街のデザイン。通常のネオンではなく立体的なプロジェクション技術を用いた看板が多数採用されている。
《STAFF》
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ脚本:ハンプトン・ファンチャー,マイケル・グリーン原案:ハンプトン・ファンチャー製作:アンドリュー・A・コソーヴ,ブロードリック・ジョンソン,バッド・ヨーキン,シンシア・サイクス・ヨーキン製作総指揮:リドリー・スコット,ビル・カラッロ,ティム・ギャンブル,フランク・ギストラ,イェール・バディック,ヴァル・ヒル共同製作総指揮:イアン・マッグローイン,オーサ・グリーンバーグ共同プロデューサー:カール・O・ロジャース,ダナ・ベルカストロ,スティーブン・P・ウェグナー撮影:ロジャー・ディーキンスプロダクション・デザイン:デニス・ガスナー視覚効果監修:ジョン・ネルソン衣装デザイン:レネー・エイプリル音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ,ハンス・ジマー
《CAST》
ライアン・ゴズリングハリソン・フォードアナ・デ・アルマスシルヴィア・フークスロビン・ライトマッケンジー・デイヴィスカーラ・ジュリレニー・ジェームズデイヴ・バウティスタジャレッド・レト