浦沢直樹、「漫勉」シリーズは「漫画家の醍醐味」伝える 読者と描き手の“溝”解消を意識
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0コメント0件Eテレの人気シリーズ「漫勉」の3月放送では3人の作家が登場する
「漫画家・浦沢直樹による人気シリーズ「漫勉neo」。今回は3人の漫画家の個性に迫る【【写真:(C)NHK】
日本を代表する漫画家・浦沢直樹が、漫画家たちの創作の秘密に迫る異色のドキュメンタリー「漫勉neo」(Eテレ)。普段は担当編集者ですら立ち入ることができない漫画家たちの仕事場にカメラが密着し、「マンガ誕生」の瞬間をドキュメント、その貴重な映像を元に浦沢直樹が同じ漫画家の視点から対談で切り込んでいく人気シリーズに、2021年後期は3人の漫画家が登場する。収録を通じ、浦沢が感じた「スピード」の違いや、番組誕生のきっかけとなった思いを聞いた。――今回出演される3人の先生について、印象的だったことを教えてください。「今回も、同じ職種とは思えないくらいそれぞれが全く違う漫画の描き方で、漫画というジャンルがいかに多岐にわたっているのかがよくわかります。あとは、キャリアも全然違います。青池保子先生はキャリア50年を超えるレジェンドであり、一番若い渡辺航さんは自転車に本気で乗り続けていて、珍しいくらい身体を鍛えてらっしゃる。かと思うと、新井英樹さんは20年引きこもっていらしたという。漫画というのは、そういうそれぞれの生活の中からにじみ出てくるんだという、一人一人の方の違いがすごく分かるんじゃないかなと思いますね」――番組では漫画家の作業現場をカメラで捉えていますが、浦沢先生が必ず注目するポイントはどこでしょうか。「ペンスピードですね。速い人は、このスピードだからあの躍動感が出るんだとか。ちょっとずつ進めていく人は、この進め方だからこの繊細さが出るんだとか。大きく言えば、作品全部を作っているムードだったりを、ペンスピードがつかさどっているようなイメージがありますね。 道具も本当にそれぞれみんな違う。渡辺さんの『弱虫ペダル』は、ほとんど彼自身で描かれているんですが、スピード線や自転車の躍動感とかは、『漫勉』史上最速で描かれていると思いました。そのためには、やっぱりペン先が重要なんですよね。彼はGペンを使っていましたけれど、太いGペンの大量のインクをつけて、それでザッと。そうすると、すごいスピードで描けるんですよね。 新井さんは、作品からすると速い方かなと思っていたのですが、『漫勉』史上、1番遅いかもしれない。勢いに任せているのではなく、資料の中で深く考えて、ゆっくりいろいろ考察しながら描いていらっしゃる。あの作品をそのスピードで描いているんだというのはすごく新しい発見でした」
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