本郷奏多のディープな日常 ストイックな表現者、俳優もYouTubeも「一番良い状態のものを届けたい」
動画編集に熱中する本郷奏多は本紙カメラマンの動画撮影機材に興味津々(撮影・西川祐介)
【夢中論】俳優の本郷奏多(31)は、動画編集が日課だ。俳優としてさまざまな作品に出演している一方で、YouTubeチャンネル「本郷奏多の日常」の登録者数は約55万人。細身の体からは想像の付かない熱量で、独特な世界観を発信している。(糸賀日向子)機材が置かれた自室でパソコンの画面と向き合う。あらかじめ撮影しておいた素材を編集。ソフトを使用してカット作業をし、大きさや色を設定したテロップを付ける。その後、BGMを追加するのが、経験から生み出した効率の良い手順だ。「自分で撮影から編集まで全てやるのがこだわり。工程の中で思い浮かんだことを書きためながら進めていきます。面白くできる方法を思いついた瞬間は楽しいですね」。クールな表情と、あどけない笑顔のギャップが魅力的だ。大学時代に授業で動画編集を学習。コロナ禍で時間に余裕が生まれたことで30歳の誕生日にYouTubeチャンネルを開設した。「撮影などが止まってしまって、クリエーティブなことが何かできないかと始めました」それから1年3カ月で投稿した合計は198本。10分前後の作品をコンスタントに投稿している。「間隔が開かないように意識していて地方ロケにもパソコンを持参してます。仕事以外の時間のほとんどを動画編集に費やしています」元々YouTubeの大ファン。黎明(れいめい)期から人気ユーチューバーの東海オンエアや水溜りボンド、はじめしゃちょーらを欠かさず視聴。その精神は自身にも受け継がれている。「編集のテンポ感は初期のはじめさんだと思うし、丁寧さは水溜りボンドの精神をリスペクトしてる。『水溜り…』は毎日投稿すると宣言して、2000日くらい実行したんですよ。約束を守る姿は凄くかっこよくて尊敬しています」自身もチャンネル開設日から年末までの約1カ月半、毎日投稿することを宣言。「僕も人生で一番心掛けているのは自分が言ったことは絶対にやること」と忙しい俳優業と両立しながら実行した。チャンネルのコンセプトは休日ののぞき見だ。競馬ゲーム「ダービースタリオン」で育成した馬が3冠馬となればガッツポーズ。テレビゲームの人気ソフト「ロックマン10」のノーダメージクリア挑戦で失敗すると頭を抱えて落胆する。「“日常”なので、あくまで自分が楽しいと思えるものをやります」友達の誕生日やイベントもサプライズなど準備を重ねるタイプ。動画作りでも俳優業でも根底にあるのは“人に楽しんでもらいたい”思い。原動力は「作品を見た方に良かったと言ってもらうこと」だ。現在、書きためているネタは100個以上。「やりたいことが多すぎて更新のペースに追いついていないので、たまる一方。でも自分だけで全てやることは絶対に貫きます」芝居が「台本に書いてある、与えられたことを真面目にやる」という俳優としての表現の場ならば、YouTubeは等身大の自分を発信する場。「マニアックかつ踏み込んだ域まで行っている趣味が多いので、見応えはあるんじゃないかな」撮影は基本、自室。ポケモンから独自で考案したお菓子の食べ方まで、こだわりの強い独自の世界観を自身でカメラを向けながら紹介する。コアな知識を発揮するテーマの一つが「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデル作り。工具箱からさまざまな道具を持ち出し、塗装や電飾、改造で達人技を披露。動画は10分前後にもかかわらず、撮影にかかる時間が2週間になることもある。それでも「自分の作品なので中途半端なものを出したくない」と一切妥協は許さない。「俳優でもYouTubeでも手を抜かずに一番良い状態のものを届けたい」。表現者としてのこだわりだ。常にストイックな姿勢で2つの顔をこれからも発信していく。≪NHK連続テレビ小説「カムカム…」大部屋俳優役「殺陣楽しい」≫現在放送中のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(月~土曜前8・00)に出演中。朝ドラ史上初めてヒロインが3人となり、親子3代を描く。本郷は番組中盤からの出演で「お会いしてこなかった(キャストの)方たちの思いを継いでいるので、責任もって丁寧に演じなきゃと思っている」と明かした。川栄李奈(27)演じるヒロインと恋仲になる、映画村の大部屋俳優役。「新しく練習して、チャレンジさせてもらった殺陣が楽しいです」と語った。◇本郷奏多(ほんごう・かなた)1990年(平2)11月15日生まれ、宮城県出身の31歳。02年に映画「リターナー」で俳優デビュー。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」、映画「鋼の錬金術師」シリーズなどに出演。血液型O。