自分以外の漫画家の秘密に迫る浦沢直樹、着目するのはペンのスピード「新しい発見でした」
「漫画描きの醍醐味を体感してもらえると思う。今の時代だからこそ(映像で)残せるものがある」=木田諒一朗撮影
9日の放送では、少女漫画界のレジェンド・青池保子に密着する
「YAWARA!」「20世紀少年」など多くのヒット作を生み続ける漫画家・浦沢直樹が、同じ漫画家の創作の秘密に迫る「浦沢直樹の漫勉neo」の新作3作の放送が、2日からEテレで始まった。浦沢は「創作現場に入ることは、作品の深いところまで見つめるきっかけになる」と語る。(川床弥生)
今回も、自転車競技を描く少年漫画「弱虫ペダル」の渡辺航や「エロイカより愛をこめて」など骨太な少女漫画で知られる青池保子(9日午後10時)、「宮本から君へ」の新井英樹(16日同)など、個性的な描き手が登場した。
仕事場にカメラを据え、映像をもとに浦沢と対談する。「それぞれの生活から、作品がにじみ出てくることがよくわかる。泣いたり笑ったり、本当にその顔をしながら描いています。青池さんは表情に富んだ方でした」
着目するのは、ペンのスピードだ。「躍動感や繊細さ、作品全部を作るムードをつかさどっているイメージ。新しい発見でした。今回の渡辺さんは漫勉史上最速で、自転車のスピード感を描き、新井さんは一番遅いかも。深い思慮の中で描いている感じ」
「弱虫ペダル」の疾走感のある作画の秘密がわかる
番組は2014年に始まり、29人の漫画家が出演した。「一人一ジャンル」と表現するほど、創作の方法は千差万別だ。きっかけは、漫画を描く途中の面白さ、醍醐(だいご)味を知ってほしかったことだった。
「絵を描くことって一つのパフォーマンスだと思う。白い紙に思い描く表情や風景が描けた瞬間は自分でも驚いて感動するのに、読者は出来上がったものしか見ない。そのジレンマを感じていた」
16日は、鬼才・新井英樹の制作現場を映し出す
レジェンド漫画家も登場した。昨年亡くなった「ゴルゴ13」のさいとう・たかをの作画場面は貴重な映像になった。「漫画家に定年はない。命終わるまで描いてるんだろうなと思う」としみじみ語る。「漫画はお金をかけず、紙とペンだけでエンタメをすることから始まった文化。日本の漫画は感情表現が豊か。いい形で次の世代につなぎたい」