沿って, Uav-jp 14/08/2022

連載[見えますか『2km』]<3>IT技術 | 新潟日報デジタルプラス

対岸からランチボックスを運んだ宅配ドローン=10月、新潟市中央区

 「ブーン」と音を出しながら、食品を積んだドローンが信濃川上空を飛んだ。10月下旬、ビルやマンションが立ち並ぶ新潟市中央区の「にいがた2km(にきろ)」エリア。市内のドローン実証実験は今年3件で、いずれも2kmの周辺エリアで行われた。昨年はなかった。

 実証実験を行った企業の一つは、将来的に空飛ぶ車の実用化を目指している「FPVロボティクス」(東京)。信濃川で宅配ドローンの試作機を飛ばした駒形政樹社長(51)は「都市部の人目に触れる場所で実験することに意味がある」と語る。

 人口密集エリアでのドローン飛行は規制があり、ハードルが高い。6月に新潟駅南口の商業施設で行われた実験は、都市部でのドローン飛行として全国初の事例だったが、道路をまたいで飛行したため、国土交通省や警察など複数の機関との調整が欠かせなかった。

 事業者に代わり関係機関とのやり取りを重ねた、市成長産業支援課の宮崎博人課長は「新しいビジネスの普及に行政が前向きな姿勢を示したい」と話す。

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 市は「2km」を軸に、IT系企業の誘致や新ビジネス創出支援などICT推進の取り組み強化をうたう。あらゆる分野でデジタル化が進む中、市内に集積したIT企業がイノベーションを生むことを狙う。

 モデルになりそうなのが中央区の「NINNO(ニーノ)」。IT関連企業が集積するスペースを目指そうと、県の補助金を活用して民間企業がおよそ1年前に新潟駅南口エリアのビル内に開設した。地域課題の解決を掲げ、メンバー企業の連携を重視している。

 プロデューサーを務めるコンサルタント業「イードア」(東京)の石川翔太・新潟支社長(33)は「それぞれの強みを持つ企業が、がっちりコミュニケーションを取れる距離感がイノベーションには大事だ」と集積する意義を語る。

 最先端の「知」を集め、どう活用するのか。市はその未来像の一つとして、市内の食と農と、「2km」発のITを絡めるとする。ひいては農業が盛んな8区との連携につながるという。

 IT事業者からは早速、規制が緩い信濃川の上をドローンの空路とし、都心エリアと周辺区を直接つなぐといったアイデアが聞こえる。新ビジネスが創出されれば、全国的に注目され、人や企業が集まるきっかけになる可能性がある。

 ただ、市内には既に、農業にITを活用している先進的な生産者はいる。約120ヘクタールの農地でスマート農業を積極的に推進する白銀カルチャー(秋葉区)の荒木康男社長(68)は「どのサービスを取り入れるかは、使い勝手とコストの問題だ」と語る。「2km」という地の利だけでは、市内の生産者らに選ばれるかは分からない。

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 IT企業などが集積すれば雇用の場の創出が期待されるが、現状を懸念する声もある。

 2kmエリアに開発拠点を置くIT企業の社長は「家の建築で例えるなら、(示された設計図通りに)ひたすら釘を打ったり、かんなをかけたりしている人が多いイメージ。設計図を作れる人が少ない」との問題意識を持つ。

 別の企業からも市を選んだ理由として、採用面で競合が少ないことや人件費の安さ、離職率が低いことを重視したとの声があった。安価な労働力の供給地として新潟市が選ばれてしまうと給料が上がらないなど、魅力的な働く場にはなり得ない可能性がある。

 進出したメリットや働く場にして良かったと思われるエリアに育てていけるか。人材育成なども含め、市の描くイメージを具体的に示すことが求められる。

 新潟市などでつくる市スマートシティ協議会は10、11月の2カ月間、「にいがた2km」のエリアで個人が持つスマートフォンの電波を捕捉するAI端末を試験的に設置している。どんな人がどこから来てどう回遊しているかを調べる目的だ。端末の設置場所は非公表だが、人流が多い商業施設などに5台置かれている。

 AI端末はアプリの使用歴やウェブの閲覧履歴などを収集し、性別や年代などの属性が推測できる仕組みだ。販売元によると、飲食店などのマーケティング調査で使われることが多く、まちづくりの目的で使うのは珍しいという。

 市は収集された膨大なデータを分析することで、ターゲットを絞った効果的なイベントの集客やまちづくり施策に生かせると期待している。

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