沿って, Uav-jp 14/02/2023

日本のローカライズがおざなりな、 Snapchat の国内事情:それでも「使い道」はないわけではない

日本国内では、ほぼ忘れ去られた存在になっているSnapchat(スナップチャット)。日常生活においても、その熱心なユーザーに出会うことは稀だろう。

DIGIDAY[日本版]ではこのたび、日本国内におけるSnapchatの正規広告販売代理店の担当者と接触。その際に確認した、同プラットフォームの国内向けメディア資料によると、2018年5月15日時点の国内DAUは7桁前半(かなりの序盤だ)だった。なお、具体数の公表については、「差し控えて欲しい」との希望があったため伏せておく。

ちなみに、「DAU」をメインの指標としているプラットフォームは少ない。なので、一概に比較できないが、国内で普及しているメジャープラットフォームの「MAU」は、だいたい8桁となっている。

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Snapchatの親会社スナップ(Snap)の2019年第3四半期決算資料によると、グローバルDAUは前年比13%増の2億1000万人。収益は4億4600万ドル(約480億円)を記録し、対前年比50%増で、復調の気配を見せていると、テッククランチ(TechCrunch)は報じている。しかし、先述のメディア資料の数字からすると、国内の状況は、それに追いついていないといえそうだ。

ローカライズ不足で国内ウケせず

サービス開始時期は2011年と、写真・動画共有サービスとしては後発というわけでもないSnapchat。国内でもカメラフィルター機能がインフルエンサーの間で話題になり、それなりの知名度もあるはずだ。

しかし、こうした「惨状」を呈している理由として、この代理店担当者は他サービスに比べ、ローカライズがおざなりになっている点を指摘する。「アプリそのものは日本語化されているものの、ディスカバーなどソーシャル面はまったくローカライズされておらず、地域も絞り込まれていない。表示されるスナップは国外のユーザーばかりで、日本で使うにはハードルが高い」。

日本のローカライズがおざなりな、 Snapchat の国内事情:それでも「使い道」はないわけではない

この点について、その代理店は、スナップへ指摘をしたことはあるものの、特に反応はなかったようだ。また、あくまでその代理店が確認できる範囲ではあるが、ブランドやパブリッシャーによる日本語の公式アカウントも存在しないという。だが、日本のマーケターにとっても、Snapchatは「使い道がないわけでない」ようだ。

国外向けプロモーションでは有効か

正規代理店が日本に存在していることからもわかるように、数は多くないもののSnapchatの利用事例はある。アメリカやヨーロッパ向けのサービス・プロダクトを提供している企業が、完全に国外向けのプロモーションのために利用するパターンだ。「最近でもアプリメーカーが国外ユーザー向けのプロモーションを実施した。国外に特化して効果的なプロモーションを実施できるサービスだと考えると、コスト面でも悪い選択肢ではない」と担当者も語る。

グローバルでも、Snapchatはどちらかと言えば「弱者」の立場だ。過去に紹介した、米DIGIDAYが入手した同社の媒体資料によると、北米圏のDAUは9200万人に達する。また、スナップの2019年第3四半期決算資料ではEU圏のDAUは6500万人となっており、DIGIDAY[日本版]が確認した国内向け資料の国別数値の合計とほぼ一致する。

ユーザー構成は、17歳以下が20%、18〜34歳が64%、35歳以上が17%と、他サービスに比べティーンから若年層が多く、男女比率に比較的差がないといった特徴もある。大前提としてグローバルに展開するサービスやプロダクトであり、国内でのプロモーションはまったく別の方法を考慮する必要はあるものの、活用の仕方次第でSnapchatを通じて新しい層へのリーチへとつなげることも可能かもしれない。

ちなみにAPAC圏ではオーストラリアやインドネシア、マレーシアが日本を上回るものの、シンガポール、タイは日本以下となっている。リージョンの合計でも欧米にくらべ低調な印象は否めない。

選択肢のひとつになり得る?

思い返すとSnapchatは3年前に、Facebookからの買収提案を拒否した。これは、現状を見る限り悪手だったかもしれない(同年、Googleも買収を試みていたとの報道もあった)。インスタグラムやFacebook、WhatsAppには次々と、Snapchatと同じようなストーリー機能が実装されていき、気がつけばストーリーの先駆者が後塵を拝している状態だ。後発サービスであるTikTok(ティックトック)からのプレッシャーも増している。

一方で、Facebook以外とのパートナーシップによって抵抗する動きも見せつつある。2018年6月にはSnapchatのフィルターやストーリー、ログインなどの機能を他サービスと連携・共有できる「Snap Kit」を提供開始。2019年4月時点で200以上のサービスと連携しているとしており、Tinder(ティンダー)やNetflix(ネットフリックス)、Fitbit(フィットビット)などが、それに含まれている。

Snap Kitでは、中東圏やインドのサービスとの連携にも取り組んでいるという。その成果なのか、サウジアラビアでのDAUは、EU圏の平均値を上回るまで成長した。イスラエルやドバイなどでもユーザーを獲得しつつあり、中東圏で伸長していると、代理店担当者も話す。

Snap KitにはSnapchat広告を他アプリに配信できる「Ad Kit」も含まれ、全画面縦型動画広告やコマース広告、ショッピング機能など新たなプロダクト開発も進めている。広告の改善が進み弱点であるユーザー数を補う試みが成功すれば、「第三極」とまではいかないまでも、新たな選択肢となり得る可能性はあるかもしれない。

「つい最近まで、代理店独自メニューを販売することも認められておらず、我々もようやく最近になってセールスに本腰を入れ始めたところだ」と代理店担当者も続ける。「ポテンシャルを考えると、今後はアジアでも何らかの動きを見せるのではと考えている」。

Written by 分島翔平