中国王朝の崩壊の背景にあった「爆発」
2022年01月13日 AsianScientist
火山の噴火によって突然の気候変動が起こり、特に既存の社会的不安定性と相まって、中国王朝の崩壊を引き起こした―
AsianScientist ― 過去2千年にわたって、中国の各王朝の支配者たちは侵略、反乱、その他の社会不安に直面し、それが続いてきた。しかし、ある国際チームの研究から、火山の噴火などの環境ストレッサー要因も王朝の崩壊が繰り返された理由の一つであると分かった。この結果は Communications Earth&Environment 誌で発表された。
火山が噴火すると、破壊的結果がもたらされることが想定される。古代ローマのポンペイのように、溶岩や火山灰が広く噴き出し、町が埋められる。長期的に見ると、気候パターンは空気を覆う火山からの放出物の影響を受けやすい。主に二酸化硫黄ガスで成り立つ粒子により太陽光は散乱し、水の蒸発は減少し、降雨量は少なくなる。
気温が急激に下がり、干ばつが見られるようになると、気候ストレッサーは農業に被害を引き起こし、家畜は死んでいく。しかし、特に多くの災害が1回限りの出来事であり歴史を通して適用できるエビデンスがないことから、火山活動が社会崩壊に与える影響を体系的に説明することは難しいことが分かっている。
中国の歴史には数多くの王朝がある。この2千年間の社会の隆盛のサイクルを調べることで、火山の爆発が文明に与える影響についての知見を得ることができるであろう。
中国の浙江大学とアイルランドのトリニティカレッジダブリンの研究者が率いる国際研究チームは、正確な歴史記録と氷床に堆積した硫黄からの火山性年代測定法を使用して、人間と環境の関係性を調査した。
王朝崩壊は68例あったが、そのうちの62例では崩壊前の10年以内に火山噴火が起こった。これらの観測が偶然によるものかどうかを確認するために、研究者はさまざまな時間幅で試験を行った。崩壊現象をランダムに分散させコンピューターシミュレーションしたものを歴史パターンと比較した。
驚くべきことに、噴火の回数は当初の時間幅で考えられていたそれよりも多く、火山の爆発と気候の影響が中国王朝の崩壊に繰り返し長期的な役割を果たしたことを示すものであった。これは複雑な関係性を持ち、一部の王朝は噴火後、崩壊まで10年耐えることができたが、他の王朝は噴火後に非常に急速に崩壊した。
研究チームは、王朝がすでに戦争などにより不安定性が高まっていた場合には、小さな火山の噴火でも崩壊の決定的な、または最終的な引き金になることを発見した。一方、火山の爆発が大きければ、既に存在していたストレッサーが小さい場合でも、根本的な崩壊の大きな原因として作用した。
過去の中国王朝が経験したものと比較して、最近の噴火は規模が小さい。だが、もし将来、大爆発があれば、いくつかのコミュニティ、特に疎外された人々と農業に依存している人々に大きな影響を与えるであろう。
研究者たちは、調査結果から、特に紛争や他のストレッサーを理由として気候の回復力が低い地域では、将来の噴火に備える必要性を強調すべきと考えている。
「この研究は、崩壊を単因性あるいは環境決定論的に説明することが不適切であることを明らかにしただけでなく、環境要因を排除した既存の歴史的説明も不適切であることを明らかにしています」と著者たちは指摘している。また「火山によって誘発された気候ショックは、これらのイベントで頻繁に役割を与えられている一連の要因の中で重要な位置を占め、それらと統合されるべきです」とも述べている。
発表論文等: Gao et al. (2021) Volcanic climate impacts can act as ultimate and proximate causes of Chinese dynastic collapse.
原文記事(外部サイト):●Asian Scientisthttps://www.asianscientist.com/2021/11/in-the-lab/volcanic-eruptions-collapse-dynasty-china/
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