沿って, Uav-jp 12/05/2022

待望の折りたたみドローンDJI Mavic 3が登場! 従来モデルと比較してみた | VIDEO SALON

レポート●稲田悠樹(コマンドディー)

Mavic 3の基本性能ついて

まずは、今回のMavic 3で注目すべきトピックを3つ挙げてみる。

ひとつめはハッセルブラッドと共同で独自開発した4/3インチCMOSセンサーと35mm判換算で24mmの広角レンズを搭載したカメラ。12.8ストップのダイナミックレンジをもち、4:2:2 10-bit D-logにも対応し、5.1K/50fps及び4K/120fpsの動画を撮影できる。ハッセルブラッドは人類が初めて月面着陸を達成した際に使われた最初のカメラ。そんなハッセルブラッドが空飛ぶカメラを開発したと思うと感慨深い。

ふたつめが最大46分の飛行時間及び映像伝送距離が最大8Km(日本仕様)を有する飛行性能。半年すこし前に発売されたAir2sで最大31分の飛行時間だが、なんと約1.5倍の飛行時間を有している。ここ数年、スマートフォンではバッテリー容量が大きいものが次々と出てきているにもかかわらず、Mavic 3ではバッテリー容量はほぼ変わらず、内部の電力消費を抑えることで飛行時間が圧倒的に向上していることに驚いた。

3つめは安全性を確保するための全方向障害物検知機能を搭載したこと。以前のMavic 2 Proでは20mだった障害物の検知距離が、200mへと大幅に拡大した。それによって全方向で障害物を避けるだけではなく、RTHや自動追跡飛行の際など、様々な自動飛行機能関連の大幅な性能UPに貢献している。

カメラ、飛行性能、安全性能及びインテリジェント機能すべてにおいて大幅なアップデートがされている。

Mavic 3の注目機能を試す

動画ではまず、4K/120fpsのスロー撮影を試した。D-Logで撮影したものとメーカー純正のRec.709に変換するLUTをあてたもの。次に最大28倍のズーム機能。同じ場所からズームして画質を検証してみた。5.1Kは最大50fpsでの撮影が可能。約17:9のアスペクト比になるため、16:9の素材と合わせて使うならば上下を伸ばし、左右をクロップして使うことになる。動画の最後は全方向障害物回避の検証を行なった。スティックは前後にのみ舵を入れてして、障害物の木を検出して見事に回避していた。

こちらのサンプルは4K/120fps、D-log、ズームに加えて、室内をGPSなしで飛ばしたテストも実施。

Mavic 3のラインナップ

Mavic 3には3つのラインナップが用意されている。通常版(253,000円)、Fly More コンボ(341,000円)、Cine Premium コンボ(583,000円)の3種類だ。

通常版は、本体、送信機、バッテリー1本。Fly Moreコンボはこれらに加えてキャリーバッグ、NDフィルター、バッテリー2本、充電ハブが追加される。そして、Cine Premiumコンボは、さらにスマートコントローラーのモデルチェンジした送信機DJI RC Pro(輝度が1000nit、バッテリー性能、HDMI出力、映像伝送性能が向上)が付帯し、カメラ性能としてAppleProRes422HQでの撮影が可能になり、その保存先として本体に1TBのSSDが内蔵されている(Cine Premiumコンボ通常のコントローラーは同梱されない)。どこまでの画質を求めるかによってMavic 3にするのかMavic3 Cineにするのかで別れることになる。

アプリケーションについて

DJI Miniシリーズ、Airシリーズと同じDJI FLYアプリを利用する。使用感について大きな変更点はないのだが、映像の設定が増えている。

待望の折りたたみドローンDJI Mavic 3が登場! 従来モデルと比較してみた | VIDEO SALON

また、進化した全方向障害物センサーだが、左下の機体位置情報表示に障害物がどこにどんな形状であるのかチャートのように表示されていた。赤色が近くの障害物、オレンジが少し遠いものを表している。

カメラ性能と録画モードについて

ドローンと言えば、これまで多くの機体が1インチセンサー(Mavic 2 ProやAir 2S)が画質の基準だったが、今回ハッセルブラッドと独自に共同開発した4/3型CMOSセンサーになったことが一番の目玉だと感じている。3年前に発売されたInspire 2にX5sを搭載した場合が4/3型を利用する手段だったのだが、Mavic 3に4/3型CMOSが搭載されたことで、Inspire 2を持ち出すことなく、荷物を大幅に減らすことができるようになった。さらに今回のMavic 3では、2眼のレンズを搭載しており、詳細は後述するが、162mmの望遠レンズも搭載している。

4/3型CMOSセンサーの広角レンズについては24mm。絞りもF2.8-11で可変できる。最大5.1K/50fps、通常版では4:2:0 10bitのD-Log撮影ができる。今回のテストでは借りることができなかったが、CINEバージョンの場合は 、AppleProRes422HQ(4:2:2 10bit)で撮影でき、本体に内蔵されている1TBのSSDに保存が可能だ。内蔵SSDに記録した場合のためにUSB-C Gen2の端子も備えられている。

Mavic 3で録画できる解像度とフレームレート、log収録の可否については、以下の表を参考にしてほしい。5.1Kは17:9のアスペクト比のみであったり、ズーム撮影時はLogでの収録ができないなど、様々な録画モードを混在して撮ると編集でうまく画を合わせられないこともあるので注意が必要だ。

解像度/アスペクト比フレームレートLog
通常5.1K5120×2700(約17:9)24/25/30/48/50fps
C4K4096×2160(約17:9)24/25/30/48/50/60fps
4K(UHD)3840×2160(16:9)24/25/30/48/50/60fps
FHD1920×1080(16:9)24/25/30/48/50/60fps
スローC4K4096×2160(約17:9)120fps
↑アプリで選択FHD1920×1080(16:9)120/200fps
ズーム4K(UHD)3840×2160(16:9)30fps不可
↑アプリで選択FHD1920×1080(16:9)30fps不可

また120fps以上で撮影する際は、アプリ内で、スローを選択し、その後選択できるようになる。

望遠レンズの仕様

望遠レンズについては、広角レンズと仕様が異なり、1/2型CMOSセンサーで35mm判換算で162 mm。F値は4.4固定のレンズとなる。そのON/OFFは、録画ボタン横の双眼鏡のマークをタップするとズームができるモードとなる。ズームは、送信機のFnボタンを押しながらカメラ角度調整トルグをコントロールすると滑らかにズームし、もしくはアプリ上の倍率ボタンをタップすると、1/2/4/7/14/28と決まった数値でズームしていく。

どのように標準と望遠レンズが切り替わっているかというと、1から4倍までは、広角レンズ24mmをデジタルでズームし、7から28倍までは、望遠レンズをデジタルズームしている。仕様として4倍から7倍の間は、レンズの切り替えの問題なのか存在せずスキップする仕様になっており、レンズの性能をフルに利用するならば広角レンズの24㎜もしくは望遠レンズ162mmがデジタルズームされていない状態での撮影するのが望ましい。また、ズーム機能を利用している場合、撮影のフォーマットに関しても4K/30fpsもしくは1080/30fpsのいずれかでしか収録ができない(D-Logも使用不可)。ゆえに、広角と望遠を切り替えながら撮影する際には、4K/30fpsでなおかつ「カラー」モードもノーマルで撮影しないと揃わないことになる。

ユーザー目線で感じたいいところと悪いところ

次に細かいけれど、ユーザーとしてはうれしいポイントをいくつか紹介していきたい。

個人的にもう一声! というところも紹介しておきたい。まずひとつめは付属のバッグ。ドローン及びカメラメーカーでここまでこだわった付属のバッグがあっただろうか? すべての付属品がばっちり入り、まさかのバックパックに変形する機能もついているのだが、個人的にはそのせいでデカい&重いので、ショルダーだけの機能で軽くして欲しかった。

付属の送信機が、MINI2、Air2sと同じで互換性があるため、機体を購入するたびに増え続けているが、基本的にスマートコントローラーを利用するので出番がない。送信機のない販売パッケージもあるとうれしい。とはいえ、コントローラー&バッグは性能に関係ない部分なので、気に入らなければ使わなければいいという結論にいたる。

他のモデルと比較検証

サイズ感、重さとしてはDJI Air2s<Mavic 2 Pro<Mavic 3である。重さに関してはMavic 2 ProとMavic 3の差はあまりないいため、これから購入するという方は小型軽量なAir2sか高性能な3かの選択になると思う。ちなみに重さとしては、Air2sとMavic 2 Pro、Mavic 3で250g程度の差があり、バッテリー1本あたり追加すると130gずつ差がついてくる。

機体名本体(バッテリーなし)バッテリー送信機合計
Mavic 3568g331g385g1284g
Air2s365g199g385g949g
Mavic 2 Pro605g292g312g1209g

露出設定を揃えて撮影した動画からの切り出し。陽の光が変わりやすい時間帯ではあったが、どのカメラも優秀。Mavic 3とInspire 2に関してはセンサーサイズが大きいため、暗部から明部のダイナミックレンジの広さが伺える。実際の動画素材はこちらでダウンロードできるので、興味ある方はデータを見比べてみてほしい。カラー設定はノーマル(Rec.709)とD-logでそれぞれ撮影した。

総合評価

私が現場に持ち出すドローンの使用比率を表にしてみた。Mavic 3が登場した以降はこのようになると思う。

従来まで今後
Mavic 370%
Air2s55%10%
Mavic 2 Pro10%0%
Inspire 220%5%
DJI FPV10%10%
DJI Mini25%5%

Air2sとMavic2Proは完全にMavic 3に置き換えられる。ただし、Air2sを10%使うであろう理由については先に記載した通り、圧倒的に軽くて荷物が少ないこと。そして、値段も半額近い価格で一式そろえることができ、絵のクオリティに関しても1型CMOSセンサーを搭載し、logでも撮影できることを考えると、まだまだ充分に活躍できる機会がある方も多いと思う。例えるならコンデジとミラーレスの使い分けのような感覚だ。

今後、5%の現場でInspire 2を使おうと思った理由は、レンズが交換できる点かつフォーマットをそろえることができるからだ。私自身今までInsprire 2にX5sを搭載しレンズをM.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0を利用した組み合わせをよく使っていた。これは今回のMavic 3とスペック的には近い構成になる。ただし、現場ではM.ZUIKOの50mmや90mmのレンズなどで撮影する場面もあり、Mavic 3の望遠レンズでは記録フォーマット4K/30fpsに限られてしまう、すべて4K/60fpsのlogで撮影できるためInspire 2の出番はまだまだあると思っている。ただし、荷物と機体のサイズ・重量は、当然の如くInspire 2がとんでもなく大きいため毎回苦慮していたが、圧倒的に減ることになるため24㎜単体の利用に関しては、Mavic 3の圧勝と言えるだろう。

Mavic 3はどんな人におすすめか?

万全の性能備え、登場したMavic 3は映像クオリティと飛行性能と安全性能の3点においてフラッグシップ機と呼ぶに相応しい。ただし、すべての人におすすめかというとそうでもなく、DJI Air2sは、先に書いた通り予備バッテリーを含め小型軽量に持ち運ぶことができる。私自身も現場によって荷物を減らしたい場面というのは多々あるので、レンズどれ持っていこうという感覚と同じように、クオリティと荷物のバランスで選択できる幅が広がったと思う。また逆に今までInspire 2を使っていたが、Mavic 3に代替できるようになることで、荷物の軽量・小型化がとてつもなく図ることができるためInspire 2ユーザーは、即買いではないだろうか(ほんとに重くて大変だった)。

最後に

「Mavic 3 Cineの値段が高い!」一瞬思ったのだが、ふと思ったのは、飛ばさずに手持ちで、ハッセルブラッドの技術が入ったカメラで、ジンバルを搭載し、AppleProRes422HQで録画でき、4K/120fpsで撮影できる…という視点で見たら、むしろ安いのではないかと思ってしまった(先に発表されたR4Dのお値段の約半分!)。ともあれ、Cineではなくても、従来までのコンシューマー向けの空撮機としては圧倒的な進化となり、パナソニックGH5に近いスペックを有し、なおかつ折りたたんで持ち運べるドローンが出てきたとは、トンデモナイ時代になった。次は、Inspire 3でもっと驚かせてくれることを期待している。

◉稲田悠樹コマンドディー代表。空撮業務を行う傍ら、初心者向けドローン情報サイトDRATIONを運営。その他様々な雑誌等にドローンに関わる記事・情報を提供。企業へのドローン導入に関するアドバイスも行なっている。 熊本地震では、災害ボランティアとして活躍する一方で、被災地現場でのドローン空撮で自治体とも連携。WEB●https://command-d.com/

●DJI Mavic 3製品の詳細

https://www.dji.com/jp/mavic-3

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