買収で製品群はさらに豊富に、ルネサスの産業事業は新たな成長段階へ:ドローンなどの新興市場にも攻勢(1/3 ページ)
2021年8月に英Dialog Semiconductorの買収を、そして同年12月にはイスラエルCeleno Communicationsの買収を完了したルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)。これらの買収により、ルネサスでは産業向け事業がさらに強化されることになった。ルネサスのIoT・インフラ事業本部(IIBU)でエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるSailesh Chittipeddi氏に、買収によるシナジーや、同事業本部の戦略について聞いた。
――2021年のIIBUは、業績などを含めていかがでしたか。
ルネサスのSailesh Chittipeddi氏 出所:ルネサス エレクトロニクスSailesh Chittipeddi氏 総じて非常に良い1年となった。COVID-19の影響で、家電やノートPCといった市場が後押しされたことや、インフラ関連では「Windows 11」への移行や5G(第5世代移動通信)の本格普及が進んでいることが、IIBUのビジネスを押し上げた要因になっている。
Arm「Cortex-M」コアベースのマイコン「RAファミリ」も勢いづき始めた。数年前までルネサスはArmベースのマイコンでは後れを取っていたが、追い付いたといえるのではないか。さらに、2021年にはRISC-Vベースのソリューションも紹介した。2022年内にも、もう一つソリューションを発表する予定だ。併せて、ゲートウェイ向けに64ビットRISC-VベースのMPUの開発も進めている。
ルネサスの売上高の四半期推移。IIBU(グラフの赤紫色の部分)は堅調に成長している[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクスこのように幅広い製品群を発表したことにより、MCU/MPUの領域のみならず、アナログ/パワーの領域でもシェアを拡大することができた1年となった。とりわけアナログ/パワーの領域では、Dialogが、2022年以降に大きな役割を果たし始めると期待している。
一方で需要が供給を大幅に上回る状態が続いている。これは2022年も続くだろう。
――Dialogの買収完了とともに、数多くの「ウィニング・コンビネーション」を発表しました。既にシナジーが見えていますね。
Chittipeddi氏 今後、Dialogがルネサスで大きな役割を果たす分野の一つは、ローパワーの領域だ。Dialogはローパワーで、旧Intersilはミディアムパワーで優れた技術を持っており、それによりルネサスはローパワーから、100Vまでのハイパワーの範囲で、価値の高い組み合わせを提供できるようになる。補完的な製品ポートフォリオがそろうので、ターゲット市場の裾野をより広げられるようになる。
さらに、Dialogが手掛けてきたプログラマブルデバイス「GreenPAK」を、ルネサスの販路を活用し産業機器市場に展開していく。モバイル市場に強かったDialogは、産業機器市場の販路が比較的弱かった。今後はそこを、産業機器市場に強みを持つルネサスがカバーできる。
2021年11月には、Dialogのプログラマブルデバイスの資産を生かして小規模FPGA「ForgeFPGA」を発表した。一般的にFPGAは高価だが、ForgeFPGAはロジックセルを5000ゲート以下に抑えたローコストの製品で、だからこそ、IoTアプリケーションにおいて素晴らしい優位性を発揮する。GreenPAKやForgeFPGAは長期的に、IoT分野でルネサスに大きな差別化をもたらしてくれるだろう。
Celeno買収でワイヤレス関連がさらに強化